2021 Fiscal Year Research-status Report
給付理論の再構成――契約総論・各論の統合的研究のために
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21K01257
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山城 一真 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00453986)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 民法 / 契約法 / 典型契約論 / 給付 / 債権 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画初年度である2021年度においては、本研究の全体に関わる基本概念である「給付」「有償性」の概念に焦点を当てて、日仏における関連する研究状況を分析した。具体的には、a)給付概念については、フランス法における契約の目的(objet)概念に焦点を当てるとともに、これを「与える」「なす」「利用に供する」という観点から整理・分析する近時の議論状況につき、文献調査を行った。また、b)有償性概念については、フランス法における有力学説が、給付が果たす役割を契約の「経済的作用(operation economique)」という観点から把握してきたことを承けて、契約のもつ経済的作用を「交換」という観点から捉えることの意義と限界につき、文献調査を行った。以上を踏まえて、日本法の学説において、民法が定める各種典型契約が――具体的な表現は様々であるが――「財産権の移転」「物の利用」「労務の利用」といった観点からいわばメゾ・レベルで分類されてきたことの意義を考察した。 これらの調査そのものについては、その内容を主題として公表することができるような具体的な結果を得るには至っていない。しかし、次年度以降の研究の進捗にとって必要な準備作業は、ある程度までは進めることができたと考えている。加えて、契約法についての研究論文を公表するにあたり、以上の検討を通じて得られた知見を活用することで、間接的ながらも研究成果を活用することができている。そのような取組みの一環として、2022年度には、以上の検討によって得られた知見を踏まえて、いわゆる著作権契約を主題とする学会報告を行うこととなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、計画年度全体を通じて取り組むべき課題の考察を行うことを予定していたが、上記のとおり、その点についてはおおむね計画どおりに検討を進めることができている。ただし、当年度に行った研究の内容は、申請段階までに予備的に行ってきた研究とも関わりをもつため、比較的に容易に研究を進めることができた面があることは否定し難い。2022年度以降は、当初の計画どおりに研究を遂行するためには、文献調査にさらに注力する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、文献調査を中心として研究を行う。また、COVID-19の感染防止に伴う海外渡航制限にも緩和の兆しがみられるため、申請時における計画に従い、文献収集および意見交換のために国外出張を実施することについても、感染状況に留意しつつ積極的に検討することとする。
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Research Products
(9 results)