2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01261
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
舩津 浩司 同志社大学, 法学部, 教授 (80454479)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 組織行為の無効の訴え / 新株発行無効の訴え / 払込みの仮装 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は、主としてわが国の近時の裁判例において現れる、会社の組織行為の無効の訴えおよびその代替手段として考えられる規律の動向を調査した。 まず、組織行為の無効の訴えの提起権がどのような性質を有するのか、とりわけ、株主が有する提訴権の性質を検討した。具体的には、株主が提訴権を有する局面において、当該株主が破産をした場合を念頭に、その訴権が管財人の管理に服することになり、管財人が訴訟追行を行うことになるのか、それとも株主自身が行使することのできる一身専属権と解するべきかについて、裁判例を基に分析を行った。 また、前年度より継続していた、組織行為の無効の訴えの対象となる行為はどのようなものか、組織行為の無効の訴えの対象となることにはいかなる意義があるかについての分析結果を、論文にまとめて公表した。新株発行無効の訴えとの関連では、さらに、組織行為の無効の訴えの対象となるかについて争いのある、新株発行等における仮装払込みの事例について、これを新株発行無効の訴えの対象とすることの意義につき、それに関連する規律(払込みの仮装者や関与取締役等に対する仮装額支払義務)との間の機能の分担等について分析した。 加えて、組織行為の無効の訴えという事後的紛争解決手段との対比の観点から、事前の紛争予防手段である定款自治の意義について分析を行った。具体的には、会社の重要な意思決定を行う株主総会の決議要件を、定款で加重した場合に、どこまでその効力を認めることができるか(どのような決議事項については効力が認められないか)についての分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主として新株発行無効の訴えを素材とするものではあるが、本研究課題の主たるリサーチクエスチョンの重要な構成要素をなす、組織行為の無効の訴えの対象となるか否かでどのような違いが生じるかについての分析を行う論考を公表し、かつ、当該論考中で他の組織行為の無効の訴えについても相当程度分析を行うことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
当年度までの研究で、組織行為の無効の訴えの現状は概ね把握できたことから、今後は、それを踏まえて、組織行為の無効の訴えを、それ自体として改善する提案、あるいは、それに代わる救済手段を検討する必要がある。本研究課題の主たるリサーチクエスチョンは「組織行為の無効の訴えはなぜ使われないのか」にあることに鑑みれば、今後の研究の重点は前者に置くべきであると考えられるものの、これには、民事訴訟法分野の専門的知見が欠かせない。本研究課題のさらなる推進のための協力体制を構築していく必要がある。
|
Causes of Carryover |
当年度も日本法の分析を中心に据えたため、外国法文献等の購入が少なかったために、結果として2022年度の未使用分がそのまま繰り越された形になっている。2024年度において、外国法文献の 購入に充てる予定である。
|
Research Products
(3 results)