2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of Modernization of World's Contract Laws using CISG as a Central Axis of Evaluation - Towards the Post CISG
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21K01263
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 到史子 関西学院大学, 司法研究科, 准教授 (30289029)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際物品売買条約に関する国連条約 / CISG / アジア契約法 / 比較法 / 契約法の現代化 |
Outline of Annual Research Achievements |
比較法の中心軸となるCISG(国際物品売買契約条約)の、世界で最も代表的なコンメンタールの翻訳作業を、3つの部分に分けて、その「第1フェーズ」を開始した。 準備作業として、最新版の翻訳を開始するため、原著者からのライセンスの取得・出版社との打ち合わせ・翻訳プロジェクトのチームメンバーの構成・プロジェクトの進行方法の決定をチームで行った。幸いなことに原著者の寛大なご厚意と、プロジェクトの大変優秀なメンバーに恵まれ、有意義なスタートをきることができた。 実際の作業行程は、(1)最新のコンメンタールを翻訳することによって、詳細で正確な、CISGの最新の理論・判例状況を確認し、比較のポイントとなる問題点の抽出をする。(2)さらにこれと平行して、比較法を行う国の比較法研究者の人選を開始し、準備作業として、各国法との比較法をする基礎のため、まずは各国の研究者間でCISGの最新の内容の共有をするために、研究会を組織した。(3)研究会では、最新のコンメンタールの内容を確認したうえで、「CISGと日本法との比較法」を例に示しながら、抽出された比較法のポイントとなる項目に沿って、「CISGと各国の契約法との比較」をするための共通認識を得ることを目指して、今期はその為の準備を整えた。CISGの最新状況を踏まえ、比較法のポイントを明確にした上で、各国法との比較を行うことによって、正確な比較を実現しようとするものである。 CISGは売買法と国際私法を内容とするため、範囲が広いので、翻訳プロジェクトは、全体を3つに分けて、第1フェーズから第3フェーズの3段階で、内容毎に上述の検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
準備作業の最初の段階で、足踏みが続いたが(原著の改訂時期と重なったことが、その後の交渉全般にわたり影響を及ぼした)、改訂原稿が到着してからは予定通りに進行し1年目に予定した所までは一応進んだ。 翻訳作業は第1フェーズにあるが、この翻訳作業と同時進行で開始している、各国法との比較法の準備作業は、翻訳作業に合わせて、CISGの最新内容の確認を行いながら、そこから「比較法のポイントとなる各項目を抽出する作業」を行い、これが比較法の全体行程の第1段階となる。さらに、具体的な各国との比較のために、ポイントとなる点について「典型例」を設定して、各国での結論を比較する準備の検討も行っている。 この際、CISGのルールの内容の把握のために、CISGの最新の判例(判決・仲裁を含む)・学説の検討を踏まえ、特に、近年問題となってきているCISGに直接規定されていない境界領域分野(契約締結上の過失・約款・ライセンス契約など)についても検討を拡げている。 また、各国法との比較にあたっては、判例や実際の運用など、実際の事実に注意しながら検討を行う必要のため、条文比較に止まらず、解釈運用・判例比較のほか、実施における各国の実務の現状も、実務にニーズにも応えられるよう、できるだけ対象に含め具体的に検討する方針を採用している。
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Strategy for Future Research Activity |
翻訳作業は、上述のように3つのフェーズに分けて行い、次の第2・第3フェーズで完成させる予定である。 並行して行う比較法の作業は、上述の全体行程の第1段階について、翻訳作業の第2・3フェーズの各テーマに沿って各々行う。それを踏まえた第2段階では、抽出された比較項目・典型例に従って、各国法との比較を行う。その際に各国法の背景的事情(契約法の立法経緯や法制度・政治体制・社会状況や歴史など)・判例や実際の運用についても、契約法の内容や実施に関わる点は、整理しておく。 そして、第3段階で、CISGを中心とする全方位の比較法へ各国の比較法を繋げる予定である。なお、比較法の作業は、各国の研究者との連携や、各国の言語への配慮を欠かすことができない。これらについては、名古屋大学・大阪大学の協力のもと推進する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの状況が改善しないため、現地調査の実施や研究会の開催が、全面的にオンラインとなったことなどが影響して、予算の使用用途が変更された。 今後は、状況の改善具合に合わせて、現地調査の実施や、対面での研究会の開催などを再開することで、より直接的な方法で、研究を進める予定である。
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