2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01283
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
安藤 和宏 東洋大学, 法学部, 教授 (00548159)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 著作権契約法 / 終了権制度 / ベストセラー条項 / 比例報酬原則 / 復帰権制度 / 透明性義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の著作権法に著作者および実演家を保護するための契約法的規定の導入が必要であるかという問題意識に立って、著作権契約法に関する外国の法制度とその運用状況を調査・分析した上で、現行制度の改善や新たな提案をするための総合的研究を行うことを目的とするものである。 令和3年度においては、①著作権契約法の導入に関する正当化根拠論を対象とした理論的考察を行い、著作権契約法の基礎理論を構築すること、②著作権契約法に関する諸外国の法制度と運用状況の調査・分析を行うことを中心に研究を実施した。そして、その研究実績として、リットーミュージックより単著である単行本『よくわかる音楽著作権ビジネス6th edition基礎編』、『よくわかる音楽著作権ビジネス6th edition実践編』を令和3年11月27日に刊行し、日本における著作権契約法の欠落がもたらす問題点を詳細に解説した。本書では、交渉力が弱い著作者・実演家がいかに不公平かつ理不尽な契約条件を強いられているか、そして司法に救済を求めても著作権契約法がないために徒労に終わることを指摘し、著作権契約法導入の必要性を強調した。 また、令和3年11月27日(土)と12月4日(土)に東洋大学の白山キャンパスにおいて「映像と音楽の融合2」というテーマで、4名のクリエイターやプロデューサーを講師として迎えた公開講座を開催し、「映像音楽ビジネスの構造と課題」というタイトルで、クリエイターの視点から著作権契約法の必要性・重要性を指摘する講演を行った。講演では、CM音楽、アニメ音楽、映画音楽に焦点を当てて、権利の買取契約の問題点を指摘し、交渉力の差や情報の非対称性が契約条件に反映されやすいこと、そして、日本には著作権契約法がないため、契約不均衡の事後調整がほとんどできないことを解説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集・分析については、海外の法制度に関する資料収集を行い、著作権契約法に関する諸外国の法制度の現状を整理して、その中で顕在化した問題、とりわけレコードや音楽配信における実演家への報酬が衡平ではないことを指摘し、次年度以降の研究調査の方向性をより明確にした。 海外調査については、最新の外国の情報を収集するために海外調査を行った。本年度は、特に米国とドイツ、フランス、カナダの法制度と実務問題について、WestlawやLexisNexis等を有効に活用して、調査を実施した。また、上野達弘教授(早稲田大学教授)、駒田泰土教授(上智大学教授)、山城一真教授(早稲田大学教授)と、12月1日(木)、2月3日(木)、3月22日(火)の3回にわたって、各4時間(合計12時間)、著作権契約法に関する外国の法制度について比較法的観点から議論を行った。当初の計画では、ニューヨークに出張して、エンターテイメント・ロイヤーにインタビューを行い、現行制度の運用状況や問題点を聴取する予定であったが、コロナウイルスの感染拡大により、実施できなかったため、エンターテイメント・ロイヤーであるSeth Shelden教授(シティ大学ニューヨーク・ロースクール)にZoomでのインタビューを実施した。 以上のように、現在までの進捗状況については、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年5月21日(土)に著作権法学会の研究大会として、「著作権法における契約法」をテーマにしたシンポジウムが開催される予定である。講演者は、上野達弘(早稲田大学教授)「企画趣旨&日本法」、駒田泰土(上智大学教授)「大陸法」、山城一真(早稲田大学教授)「民法から」、申請者「米国法」の4名であり、比較法的観点から著作権契約法のあり方について、総合的・多角的な視点をもって、発表・議論を行う予定である。また、シンポジウムのための論文及び講演録は、後日有斐閣から発行される「著作権研究」に掲載されることになっている。 次に令和4年度は、カナダ著作権法における復帰権制度について、詳しく研究する予定である。著作者の死後25年を経過すると、著作権が相続人に復帰するという復帰権制度は、これまで日本ではほとんど紹介されてこなかった。しかし、1710年のアン王女法に歴史的起源をもつ復帰権制度は、著作権契約法の一例として、重要な意義を有する。したがって、令和4年度は米国、ドイツ、フランス、EUのデジタル単一市場における著作権指令の調査・分析に加えて、カナダ著作権法における復帰権制度について、調査を実施する予定である。なお、この研究実績は、2022年12月10日発行予定の『知的財産法の論点(仮)』という論文集に学術論文として、掲載することになっている。 また、申請者は令和4年9月から1年間、サバティカルを利用して、台湾大学で海外研究を行うことになっている。そこで、台湾における著作権契約法について、調査・研究を行う予定である。なお、この研究実績は帰国後、紀要「東洋法学」にて発表する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたニューヨークへの出張がコロナウイルス感染拡大のために所属大学の許可が下りなかったため。次年度使用額は洋書3冊の購入に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)