2022 Fiscal Year Research-status Report
EU海洋環境法のチャレンジー洋上風力発電の推進と海洋環境の保護
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21K01284
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐藤 智恵 明治大学, 法学部, 専任教授 (80611904)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | EU海洋環境法 / 洋上風力発電 / 国連海洋法条約 / 再生可能エネルギー / 海洋保護区 / 海洋生物資源 / 持続可能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、比較的沿岸地域に近い海域で行われる洋上風力発電事業と海洋環境の保護を両立させるために必要な海洋環境法及び制度とはどのようなものなのか、EU法及び国際法の議論をもとに探求しようとするものである。 本年度は、研究の第2段階であり、第1段階の検討結果を基に、洋上風力発電の推進と海洋環境の保護を両立させるための新たな海洋環境法を作成する際の課題について、主にEU及び加盟国の法制度を検討した。 洋上風力発電事業に関し、Natura2000等の海洋保護区に関するEU法、漁業資源に関するEUの共通漁業政策の観点から、法理論的及び政策上の整合性確保が必須である。特に北海沿岸諸国では、既に洋上風力発電が多数建設され、操業されているが、その一部は非常に大規模である。もっとも、事前に環境影響評価が実施される等、海洋環境の保護との整合性確保のための法制度が施行されており、国連海洋法条約に基づく沿岸国の義務を順守している。北海沿岸のEU加盟国の洋上風力発電推進政策を見る限り、既存の国際的な海洋環境保護法及びEUの海洋環境法の枠組みを順守していることから、国際法とEU法の整合性はとれているとみなされる。しかしながら、EUでは一部海洋保護区にかかる洋上風力発電事業の認可がなされており、そのような洋上風力発電事業が当初認可されたとおりに推進されるのか、又は、事業を進める過程で環境への負の影響が生じた場合等、行政による事業中止命令が出されるのか等、EU法・国際法のみならず、各加盟国の関連法制度を注視する必要もあると思われる。BBNJを始めとする国際条約の規律が増える中、洋上風力発電事業の行方を継続的にフォローすることにより、EU加盟国の法制度がEUの法制度に影響を与え、その結果、国際的な環境問題に熱心に取り組むEUが、既存の国際海洋環境法に何らかの影響を与えるのか、引き続き検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、当初予定していたとおり、研究の第2段階として、洋上風力発電の推進と海洋環境の保護を両立させるための新たな海洋環境法を作成する際の課題に関し、オンラインでの会議やシンポジウムに参加することにより、一定程度明らかにすることができた。さらに、グローバルな海洋環境保護のあり方を考える際に重要となる、国家の義務に係る法秩序に関する検討の一部を英語論文として公表することができた。 法理論・制度の実態を検証するため、本研究課題では海外出張が重要な位置づけとなっているが、依然として新型コロナウイルス感染症による制約があり、十分な現地調査ができたとは言い難い。そのような中、研究の途中成果について、2回、国際会議で報告することができ、有意義なフィードバックを得ることができた。得られたフィードバックは、次年度以降の研究及び研究成果の公開に生かす予定である。 したがって、2022年度の研究全体にかんがみて、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究成果を踏まえ、洋上風力発電事業と海洋環境の保護を両立させるために必要な法及び制度とはどのようなものなのか、海洋生物資源・生態系の保護・海洋汚染にも適用可能な、包括的な海洋環境保護法を提案することを目指す。その際には、国連海洋法条約に基づく沿岸国の権利及び義務や、EU海洋環境法制度との法的整合性についても検討し、EU法が国際的な海洋法秩序の再編に与える影響の可能性について検討することにより、EU法と国際法の理論を交えることによって新たな法理論を探求する。 引き続き、本研究の途中成果を、英語及び日本語で公表する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウイルスに係る影響により、当初予定していた海外出張を制限せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。しかしながら、日本を含む諸国での水際対策が撤廃されたため、当初予定していた海外現地調査を行う予定であり、そのために研究費を使用する計画である。
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Research Products
(4 results)