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2023 Fiscal Year Research-status Report

AIの活用時代における専門家責任の再構築に関する実態的・法理論的研究

Research Project

Project/Area Number 21K01287
Research InstitutionNanzan University

Principal Investigator

王 冷然  南山大学, 法学部, 教授 (70546639)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords専門家責任 / 金融取引 / 医療契約
Outline of Annual Research Achievements

医療分野において、医師等の医療従事者の専門的判断を補助する場合だけでなく、医師等の行う手術・手技等を代替ないし補助する場合もAIが活用されている。現段階では、前者の診断支援AIの場合も後者の手術補助AIの場合も、AIが専門家である医師等の判断や行動を完全に代替するのではなく、あくまでも医師等の判断や行動を支援したり補助したりする役割を果たすだけであり、医師が判断や行動の主体であることは変わりがない。そうすると、法的には医師が責任の主体になり、客観的に正しいAIの判断に従わなかった場合や客観的に誤ったAIの判断に従った場合は、不法行為法上の過失の有無について、従来の医療水準をもって判断すべきであるという見解が存在する(たとえば、松尾剛行「健康医療分野におけるAIの民刑事責任に関する検討―AI画像診断(支援)システムを中心に―」Law and practice13号(2019年)151頁以下、米村滋人「AI機器使用の不法行為における過失判断―医療・介護分野での責任判断を契機に」法時94巻9号(2022年)48頁以下など)。  他方、医療水準に関する判例は、すべてAIが活用される前のものであり、AIの利用が医療水準の判断にどのように影響を与えるかに関する議論が見当たらず、さらなる研究が必要である。
また、AIを物として考える場合に、製造物責任をどのように認定するかという問題が生じる。EUでは、欧州委員会により公表されたAI責任指令案と製造物責任指令の改正案において、AIの利用に関する民事責任と製造物責任を判断するにあたって、因果関係や欠陥の推定ルールが提示された。EUで示された考え方が日本の不法行為法と製造物責任法に適用することができるかどうかは、さらなる検討が必要である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

新型コロナ感染したあと、後遺症が長引くこともあり、体調がなかなか回復ができない中、講義や大学行政などの仕事を務めながら、研究する気力を保つのは困難であった。
医事法学会や金融法学会に参加するなどをして、日本での議論状況を把握することができたが、実態調査や外国に渡航して諸外国の状況を確認する作業を行うことができなかった。
今年度からは、後れを取り戻すよう研究を進めていきたい。

Strategy for Future Research Activity

まず、医師等の専門家は診断支援AIを利用する場合に、従来の医療水準に基づき過失の有無を判断することの是非およびAIの利用が医療水準の認定にどのような影響を与えるかについて、医療現場の実態や諸外国の議論状況を調査して研究を進めていく。
次に、診断支援AIを利用する場合も診断支援AIを利用する場合も同様に生じる問題は、患者とのインフォームドコンセントをどのように行われるべきか、AIの利用に関する患者側の同意は法的にいかなる意味を有するかについて、実態調査を含めて研究を深めていく。専門家の情報提供や説明義務に関しては、医師のみならず、金融業者も同様に要求されるものであり、金融業者が投資サービスを提供する場合に、AIの利用に関する顧客側の同意をどのように評価するかも研究の対象となる。
また、仮に製造物責任を追及することができた場合、開発にかかわる業者間に免責の特約が締結された場合に、それは第三者である被害者にいかなる効力を有するかも問題となる。これは約款や契約の対第三者効とも関係する問題であり、より広い視野で検討する必要がある。そのため、約款論や契約の対第三者効に関する国内外の議論状況を精査する作業を行う。
以上の作業で得られた成果について、積極的に所属機関内・外の研究会に出席し、そこでの報告を通して、他の研究者と意見を交換し、それによって自らの研究状況の把握・整理を行う。
最後に、以上のような研究活動によって得られた知見をもとに、最終的に日本法に対する提言となりうる点をまとめ、学術雑誌への投稿を予定している。

Causes of Carryover

予定されていた海外出張は、体調不良のため実施できなかった。
また、購入予定の洋書は刊行が遅れて、購入することができなかった。

  • Research Products

    (3 results)

All 2023

All Journal Article (2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 日本法における過失相殺と損害軽減義務について (1) : 統合か併存か2023

    • Author(s)
      王 冷然
    • Journal Title

      南山法学

      Volume: 46巻3・4合併号 Pages: 177-221

  • [Journal Article] 裁判例から見る債務不履行における過失相殺2023

    • Author(s)
      王 冷然
    • Journal Title

      沖野眞己ほか編『これからの民法・消費者法(Ⅰ)河上正二先生古稀記念』

      Volume: 1 Pages: 293-328

  • [Book] 遺言制度のデジタル化に関する調査研究報告書2023

    • Author(s)
      商事法務研究会
    • Total Pages
      278
    • Publisher
      商事法務研究会

URL: 

Published: 2024-12-25  

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