2021 Fiscal Year Research-status Report
Japan-EU Comparative Analysis of Growth Strategy and Digital Reform
Project/Area Number |
21K01308
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福田 耕治 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (20165286)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 八寿絵 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60625119)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | デジタルトランスフォーメーション(DX) / テクノストレス / 新型コロナ危機 / 社会イノベーション / 予見的ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「デジタル改革と成長戦略の日欧比較分析」をテーマとし、感染制御と社会経済活動を両立させる制度設計と政策提言することを目的とする。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)コロナ危機後の世界を見据え、「予見的ガバナンス」論の理論的枠組みを用い、日欧のデジタル改革と行財政資源配分の体系的制度設計と政策調整の在り方を考察する。2020年3月以降、欧州各国では新型コロナ感染拡大を抑える観点から、2019年度と2020年度前半は、人の移動制限や営業規制を実施したが、経済成長の観点から見直されることになった。新型コロナ感染症の拡大リスクを回避しつつ、同時に経済活動の再開と経済成長をはかるためにはどのような方策が要請されるのか。これはコロナ危機後の日欧に共通する成長戦略とかかわる喫緊の課題である。コロナ禍では、教育現場においても教育者がデジタル化に対応できないなかでIT依存度が高まることによる「テクノストレス」や個人間や組織と個人との間の「社会的関係性」の不足に伴う様々な社会的心理的負担感やストレスが懸念された。感染制御と経済成長という、二律背反するこの課題のソリューションとなる社会イノベーションは、「デジタルトランスフォーメーション」である。EUのフォン・デア・ライエン欧州委員長は、感染症制御を行いつつ、経済の復興の観点から、雇用創出と成長へと繋げる最も合理的な戦略は、循環型デジタル経済(circular economy)社会の構築とグリーン・ディール推進による経済成長戦略であるとする。同様の課題を抱えるわが国の状況に鑑みて、本研究の1年目は、日欧デジタル改革の現状を明らかにした。またコロナ禍における日本の教育者が遭遇したデジタル化とテクノストレスの関係を考察し、2本の英語論文を査読付き海外ジャーナルに発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、研究計画のロードマップに従い、先行研究の渉猟と論点整理を実施した。また新型コロナ危機の脅威に対応する健康、個人的な経済状況、予防的行動など1000名のサンプル数でインターネット調査を実施した。本研究では、人の移動制限や感染制御と同時に、教育活動や経済活動を守り、経済成長の軌道に乗せるためにデジタル成長戦略が果たす役割が大きいことから、リベラルデモクラシーの価値を共有する日本とEU/欧州諸国とのデジタル政策の比較分析を通じて、感染制御と社会経済活動を両立させうる制度設計と政策に焦点を当てた。デジタル経済による成長戦略を予見的ガバナンスの観点から体系的に関係づけ、政治経済学・比較政治学・医学・公衆衛生学の学際的方法によるデジタル政策の研究に本研究の独創性がある。2021年度の調査結果をもとに、多変量解析によって教育者の行動変容につながる関連諸政策との因果関係の析出を試みた点に本研究の独創性、新規性がある。観測された関連因子をデジタル・ニーズと対象者属性別に分類・評価し、デジタル技術が人々の行動に与える影響についてアンケートの収集データを基に多変量解析した(研究代表者・分担者)。その研究成果は、海外の査読付き英文ジャーナルに寄稿し、2021年10月及び2022年2月にそれぞれ採択され、オープン・アクセス論文として公刊された。PlosOne掲載論文では、公刊3カ月で3000件以上のアクセスがあり、海外査読付き英文ジャーナル医科学専門誌等でも既に何件か引用されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
EUにおけるCOVID-19への対応では、EUの外務省にあたる欧州対外行動庁(EEAS)が中核となり、各国の政府、国軍や医療機関、NGO等のハブとして政策調整と国境を越える連帯制度を可視化するデジタル・サイトを立ち上げ、欧州協力の要として極めて大きな役割を演じてきた事実に着目する必要がある。つまりEUでは、健康・公衆衛生上の規制を適切な地域と期間を限定して行い、感染拡大制御という集合行為問題への対応を試みつつ、SDGsの持続可能な経済成長が実現できるサイバー・ススペースでの連帯の枠組の構築が注目される。、日欧協力が可能ないくつかの分野とその課題も浮かび上がってきた。D X には、A I、クラウド、I o T、ビッグデータな どが含まれ、これらと関連する法令や規制の解釈を含む立法政策もデジタル化時代に対応したものへと改革する必要がある。デジタル資本主義社会においては、デジタル情報は価値の源泉であり、デジタル技術を駆使して差異と希少性から利益を得ることが可能となる。E U のデジタル戦略は、欧州の歴史的価値や伝統に基づいて 、法の支配という規範的価値をDX推進の中核に置き 、米中デジタル勢力に対抗してE U デジタル主権」確立を目指している。これは、欧州産業の競争的優位を確保する戦略を とる。これは常 に E U が世 界の貿易・投資のゲームのルールを作る側に回る戦略であり、欧州が得意と2022する制度設計・企画能力を最大限に活かすものでもあ ることがうかがわれる。2022年度以降は、これらのEUデジタル政策の行方をフォローししつつ、日本が取るべきデジタル戦略を検討し、また日欧相互協力が可能なグローバルなデジタル規制戦略のあり方を探ることが今後の研究課題となる。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により、研究代表者と研究分担者との研究打ち合わせのための会合・研究会の開催が困難であったため、次年度に開催を延期した。2021年度に出張に伴う交通費・宿泊費が支出できなかったため、2022年度の研究打ち合わせ開催時に使用する予定である。
|
Research Products
(7 results)