2021 Fiscal Year Research-status Report
欧州のナショナル・ポピュリズム運動に関する比較政治研究:バルト三国の事例を通して
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21K01323
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
河原 祐馬 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (50234109)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナショナル・ポピュリズム / エストニア / ラトヴィア / リトアニア / バルト三国 / 極右政党 / ポピュリスト / 西欧民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル化による国民国家の変容という世界的な流れに対する反動としてのナショナリズムの問題に着目し、欧州の移民受入国におけるナショナル・ポピュリズム運動についての比較政治的観点に基づく分析を通じて、現下の欧州において政治問題化が急速に進む移民・難民問題に取り組もうとするものであり、理論的・思想的背景を踏まえて、バルト三国の事例を中心とする欧州における現下のナショナル・ポピュリズム運動の内実についての比較政治的な考察を行うことを主たる研究目的としている。 研究期間全体の3年間の中で研究初年度に当たる令和3年度においては、先ず、本研究の主たる研究テーマであるナショナル・ポピュリズム運動の思想・理論的背景の考察を通して、1990年代~2000年代初頭にかけてのEU拡大後の現下の欧州における同運動の新たなイデオロギーや組織構造上の「変化」についての検討を進めるため、これらの問題に関わる欧米各国および日本における先行研究についての資料収集および文献整理を中心とする研究を進める上での基礎的作業に取り組み、昨今の移民・難民問題との関連において、主として、本研究において検討すべき主たる課題の一つとして位置づけている欧州におけるナショナル・ポピュリズム運動の基本的な「性格」もしくは「特徴」について、比較政治的な観点から論じる上で必要な研究上の諸問題(バルト三国およびフランス、オーストリア、イタリアといった欧州の関係各国におけるナショナル・ポピュリズム運動についての先行研究の整理およびこれら諸国におけるナショナル・ポピュリスト政党に関わる最近の政治動向など)を整理・分析するための下準備となる作業に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究が、その研究期間内に明らかにすべき研究上の主な課題は、1) ナショナル・ポピュリズム運動の思想・理論的背景の考察を通して、EU拡大後の現下の欧州における同運動の新たなイデオロギーや組織構造上の「変化」を検討した上で、昨今の移民・難民問題との関連において、欧州におけるナショナル・ポピュリズム運動の「性格」もしくは「特徴」を明らかにすること、2) 欧州議会の会派をはじめとする欧州各国のナショナル・ポピュリズム運動の「ヨコ」の連帯が移民・難民問題を中心とするEUの政策に与える政治的影響についての検討を行うこと、3) バルト三国の事例を欧州全体の政治的文脈の中で比較政治的観点から論じつつ、現下の欧州におけるナショナル・ポピュリズム運動の台頭が既存の政治制度の在り方に及ぼす影響について、戦後の西欧民主主義の「変容」との関わりにおいて考察すること、の3つである。これら3つの課題の内、令和3年度においては、主に上記 1) の課題に焦点を当て、この課題に関わる欧米各国および日本における先行研究についての資料収集および文献研究を中心とする知的作業に取り組み、昨今の移民・難民問題との関連において、欧州におけるナショナル・ポピュリズム運動の基本的な「性格」もしくは「特徴」について、比較政治的な観点から論じる上で必要な研究上の諸問題を整理・分析するための下準備となる作業に取り組んだ。当初の計画では、本研究の初年度に当たる令和3年度において、国立国会図書館や京都大学、北海道大学といった学術機関に本研究に密接に関わる資料収集を目的とする研究調査を予定していたが、研究調査対象地域における新型コロナウィルスの感染拡大による「まん延防止等特別措置」の適用により、予定していた研究調査を十分な形で実施することができず、これにより、本研究に係る基本的な研究資料の収集・整理作業に少なからぬ影響が生じることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
先の「現在までの進捗状況」欄で記した本研究の遂行に係る 1)~3) の3つの課題の内、令和4年度においては、主に欧州議会でのナショナル・ポピュリスト政党の活動分析に係る 2) の課題、また令和5年度においては、ナショナル・ポピュリズム運動の台頭と戦後の西欧民主主義の「変容」との関係性の分析に係る 3) の課題に焦点を当てつつ、本研究において掲げた課題解決に取り組んでいく。 令和4年度においては、令和3年度に実施できなかった国立国会図書館、アジア経済研究所、京都大学および北海道大学といった国内の関係学術機関への研究調査と併せて、可能であるならば、新型コロナウィルスの感染状況を見据えつつ、本研究の研究対象地域であるバルト三国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)の関係学術機関やフランス、オーストリア、イタリアといった関係各国におけるナショナル・ポピュリズム運動に係る政治動向を主たる研究対象とする海外調査を実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
令和3年度において、当初の計画では、調査研究活動を目的とする国内調査旅費と海外調査旅費の執行を予定していたが、新型コロナウィルス感染問題との関係で、関係各国への海外渡航の計画を実行に移すことがきわめて難しい状況にあり、また国内調査についても、出張先の自治体が「まん延防止等特別措置」の適用下にあるなどのため、県境を越えての移動に大きな制約があり、これら調査の実行を見送ることになった。 令和4年度においては、新型コロナウィルス感染拡大に係る状況を見据えつつ、東京をはじめとする本研究課題に関わる国内調査をできうる限り実施し、また、可能であれば、年度後半に本科研の研究課題に関わる調査研究活動を目的としたバルト三国など関係各国への海外調査を実施するように努めたいと考えている。
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