2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01337
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
中村 督 南山大学, 国際教養学部, 准教授 (50644316)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ジャーナリズム史 / フランス現代史 / フランス政治史 / キリスト教民主主義 / 戦後フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、解放期の情報省の分析を通じて、戦後のフランスにおいて情報秩序が再構築されていく過程を再検討することにある。解放期の情報秩序構想は、今日もフランスのメディアに関する問題や現象(メディア企業の集中化現象や政府の介入主義的性格など)の起点として言及されることが多いものの、その中心的役割を担った情報省の実態は未解明のままである。本研究は、一度、解放期に立ち戻り、一次資料に立脚して、情報秩序が再構築されていく過程を明らかにする。そうすることで、戦後フランスの情報に関する政策の諸特徴の一端が理解できる可能性があるように思われる。 本研究1年目に当たる令和3年度(2021年度)は、大戦間期から占領期にかけて政治家や知識人が構想していた情報秩序の改革を分析した。今年度は感染症拡大の影響を受けて、現地での資料調査を遂行できなかったため、すでに公刊されている文献資料を利用して、研究を進めた。具体的な研究実績の概要は以下のとおりである。第一に、先行研究を通じて、対象とする時代の情報秩序構想の主たるアクターとしてキリスト教民主主義者の集団が果たした役割を考察し、そこから当該研究の論点を整理した。第二に、このキリスト教民主主義の集団が大戦間期にジャーナリズムの世界でどのような位置を占め、何を課題として自ら引き受けていたのかを検討した。第三に、フランス政治史やジャーナリズム史のうちに当該研究を位置づけるための予備作業を行った。 以上は、共著および学会発表などに結実した。そのほかの成果は来年度に公表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の進捗状況は課題の性格上、下記3つに大別することができる。すなわち(1)資料調査(文献および資料の収集・分析)、(2)国内外での意見交換、(3)研究成果の公表である。 (1)資料調査(文献および資料の収集・分析):本年度は、海外渡航を断念せざるをえない状況であり、資料収集を進めることができなかった。当該研究の深化には、パリをはじめフランス各地での文書館での資料収集も不可欠であり、この点は「やや遅れている」としてよい。 (2)国内外での意見交換:この点は、研究課題について、国内外を問わず多くの研究者と意見交換をすることができた。また、学会発表を通じて今後の指針に資する助言を多く得ることができ、結果、「おおむね順調に進展している」といってよい。 (3)研究成果の公表:当該研究課題の成果については、資料調査が実施できなかったことの影響を受け、計画よりはやや遅れているが、ある程度、先行研究の論点も整理することができ、翌年度から公表をできるような状況が整理されている。 このように、全体としては課題を残しているものの、「おおむね順調に進展している」という評価が妥当だと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策も下記3つに大別することができる。すなわち(1)資料調査(文献および資料の収集・分析)、(2)国内外での意見交換、(3)研究成果の公表である。 (1)資料調査(文献および資料の収集・分析):上述のように、令和3年度(2021年度)は、感染症拡大の影響を受けて、フランスに赴いて資料調査を行うことができなかった。この状況はただちに改善するかはわからない。したがって、令和4年度(2022年度)は、現地での資料調査を考慮に入れながらも、日本の研究機関や図書館を通じて、公刊史料の分析を進める方向で、研究を推進していく。 (2)国内外での意見交換:この点は、オンラインを通じても進めることが可能なので、積極的に多くの研究者と意見交換する。 (3)研究成果の公表:これまでの蓄積した資料分析と論点整理をあわせて、論文や著作のかたちで充実した研究成果を公表できるように努める。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由は、フランスに赴き、各種図書館および文書館で資料調査を当初予定していたが、それが実施できなかったことにある。翌年度は、状況が許せば、現地で資料調査を行う計画である。
|
Research Products
(8 results)