2022 Fiscal Year Research-status Report
拡大核抑止をめぐる国内政治と同盟外交:冷戦期・日本の実証分析とその今日的含意
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21K01342
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
黒崎 輝 福島大学, 行政政策学類, 教授 (00302068)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 冷戦史 / ニュークリアヒストリー / 日米関係 / 安全保障 / 核不拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は国内で資料調査を進めつつ、研究論文の作成に取り組んだ。当初の計画の通り、1950年代の日本の核政策と日米関係を主な研究対象とした。 年度前半は、国会図書館や外務省外交史料館で資料調査を行いながら、英文のワーキングペーパーの作成に取り組んだ。同ペーパーでは。1950年代後半のNATOにおける核共有の進展を背景にドイツが核武装(在独米軍の核装備や核共有への参加)に向かうなか、日本において非核兵器政策が形成された経緯を検証し、NATOの核共有やドイツの核武装論議が日本の核政策論議に与えた影響を考察した。 9月にはドイツのポツダムで開催された国際会議、The German Nuclear Question, Adenauer, and the International Order, 1955-1963に、同ペーパーを提出し、口頭報告を行った。諸般の事情により、現地に行くことができなかったため、口頭報告はオンラインで行った。会議出席者からのコメントや質問を通じて有益なフィードバックを得ることができた。ワークショップ後、その成果を英文の学術書として出版することになり、提出したペーパーが収録されることになったため、年度後半は、その原稿作成に取り組んだ。 それと並行して、昨年度の研究成果として作成した研究論文の修正作業を進めた。この論文では1950年代から70年代の東アジア諸国・地域(日本、台湾、韓国)の核政策を研究対象とし 国内政治や安全保障環境、原子力開発の展開、米国の核不拡散政策に着目して比較の視点から考察した。同論文も英文の学術書の1章として刊行される予定であり、編集者から得た有益なコメントを踏まえて、追加の文献調査や論文の修正を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は資料調査の成果を研究論文としてまとめ、それを国際会議で報告することができた。学術書の1章として出版されるまで時間を要することが予想されるが、本年度当初予定していた研究課題への取り組みに大きな区切りをつけることができたといえる。 ただ、今年度は後半に入ってから、家庭の事情により研究時間の確保が困難になったため、研究が進まなかった。海外での資料調査を実施することができず、国内の文献調査しかできない状況が続いた。それでも、本年度前半までに2本の研究論文の草稿は完成していたため、その改稿作業を限られた時間で進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は当初の計画通り、80年代の日本の核政策と日米関係を研究対象とする。ただ、来年度前半までは、今年度同様に家庭の事情で研究時間を確保することが困難な状況が続く見通しである。そのため、限られられた時間で文献調査を進めつつ、すでに収集した資料を有効に活用して研究論文の作成準備を進めたい。可能であれば、来年度後半に国内のみならず。海外でも資料調査を実施する。海外渡航ができない場合は、国内からアクセス可能なオンライン資料の調査を行うなどして、少しでも資料調査を前進させるように努める。
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Causes of Carryover |
家庭の事情により、本年度後半以降、研究時間の確保が困難になったことが、次年度使用額が生じた最大の理由である。具体的には、当初計画していた国内外での資料調査ができなくなった。また文献調査に割ける時間も限られたことから、図書購入を見合わせ、その代わりに所属機関が支援する図書の現物貸借や論文の複写サービスを利用して文献調査を進めた。また、作成済みの2本の研究論文のために英文校正サービスを利用する予定であったが、投稿論文ではなく、編著書の1章として出版されることになったため、出版時期に合わせて利用することにし、その利用を先送りしたことも次年度使用額が生じた一因である。
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