2021 Fiscal Year Research-status Report
紛争後のハイブリッドな国家建設の妥当性に関する実証研究:アフガニスタンを事例に
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21K01345
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
青木 健太 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (10769277)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国家建設 / アフガニスタン / ハイブリッド / 平和構築 / 紛争解決 / ターリバーン / イスラーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ポスト紛争国における政治体制の構築に関して、欧米起源の自由主義統治モデルと、紛争当事国に存在する伝統的統治モデルを折衷した「ハイブリッドな国家建設(Hybrid Statebuilding)」の妥当性をアフガニスタンの事例から検証し、有効なモデルを提示することを目的とする。2001年に米国から軍事介入を受けたアフガニスタンは、当初の国際社会の想定と反対に、主権国家を理念型とした紛争後の国家建設が成功していない最たる事例である。同国に共存する①自由主義統治モデル、②伝統的統治モデル、及び、③ターリバーンが主張するイスラーム統治モデルの各々の固有性と共通性について、現地語資料(ダリー語)の解析と現地調査を用いた実証的手法により解明する。これにより、「ハイブリッドな国家建設」の理論的妥当性の導出に事例面から貢献する。 本年度は、ターリバーンが主張するイスラーム統治モデル(上記③)の思想的背景・行動様式と憲法との整合性について解明を進めた。研究期間において、アフガニスタン政府が事実上崩壊しターリバーンが復権したことから、ターリバーン台頭の諸要因、及び、その思想的背景・行動様式の解明に重点を置いた。政権崩壊を巡る米国、アフガニスタン政府、及び、ターリバーン各々の立場と認識について、米政府発表、欧米語・現地語(ダリー語)の学術書・文献、公開情報を通じて解析した。それによって、政権崩壊の諸要因を明らかにした成果を発表した。アフガニスタンの国家建設と治安部門改革の課題についても、伝統的統治との対比の中で検討しその成果を発表した。米軍撤退の判断を下したトランプ米政権の対中東外交を詳細に分析しその研究成果を発表した。また、国家建設に関する最近の学術書に関し、書評論文を発表した。その他、本研究に関連する研究成果を多数発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間において、アフガニスタン政府が事実上崩壊(2021年8月15日)し、ターリバーンが復権するという政変が勃発した。当初の想定では、カタルの首都ドーハで、アフガニスタン政府とターリバーンとの間の和平協議の進展を見つつ、両者を折衷する形での国家建設の様態が解明の対象であった。前提条件は大きく変わったが、ターリバーンが掲げるイスラーム統治モデルを解明する学術・実践的意義は、図らずも、高まった。 当該研究期間では、政権崩壊を巡る米国、アフガニスタン政府、及び、ターリバーン各々の立場と認識について、米政府発表、欧米語・現地語の学術書・文献、公開情報を通じて解析した。計画に従い、ターリバーンが運営する情報宣伝媒体「ジハードの声」に掲載される同勢力の公式の立場を表明する各種声明を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きターリバーンが掲げるイスラーム統治モデルの解明を続けることに加えて、自由主義統治モデルの解明のため、2019年9月に行われた大統領選挙を含むボン合意(2001年12月)以降の全ての大統領選挙結果における投票動向を、民族、党派、その他の属性の観点から、文献調査と海外研究者招聘、並びに、現地調査を通じて分析する。これと同時に、ロヤ・ジルガ(部族大会議)をはじめとするアフガニスタンの伝統的統治モデルの妥当性を検証するべく、文献調査を中心とした準備を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、当初予定していた現地調査を行うことができず、次年度使用額が生じた。今後、COVID-19の感染状況を見極めつつ、翌年度に当該助成金を現地調査費、および物品費等として活用する計画である。
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Research Products
(13 results)