2021 Fiscal Year Research-status Report
彼らは何を争っているのか:イシューの内容分析から国際紛争の発生と終結を予測する
Project/Area Number |
21K01348
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
千葉 大奈 神戸大学, 法学研究科, 法学研究科研究員 (60900149)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際紛争 / テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦争はなぜ起こるのだろうか。国際政治学は長年この問題に取り組んできた。戦争原因論の理論研究が近年大きく発展し、理論評価のためのデータ分析手法も顕著な発達を遂げてき たことと比較して、政治アクターの相互作用を精密に描写するマイクロレベルデータの収集 は遅れをとってきた。本研究では、大量のニュース記事から抽出されたテキストデータを機 械学習の手法で二次加工することで、政治アクター間の対立と協調の具体的内容を体系的・ 定量的に把握するデータベースを作成する。更に、このデータを説明変数として用い、国際紛争の発生・終結を予測する統計モデルを構築する。本研究の第一段階では、政治的アクターがどのようなイシューをめぐり対立・協調しているか、という問いに対し、ニュース記事から抽出されたデータを機械学習によるテキスト処理を通じて分析することで明らかにしていくことを目的とする。第二段階では、ICB(International Crisis Behavior)という国際紛争データに基づいて被説明変数を構築し、教師付き機械学習の手法を用いて統計モデル構築を行う。主な説明変数であるイシュー内容が、どの程度モデルの 説明力を向上させるかを明らかにする。武力紛争の発生・終結予測を行うことは、学術的な価値のみならず、 政策的な意義も大きい。このような知識は、政府や民間アクターが、政治・経済的なリソースを効率的に配分することを可能にし、また紛争予防のために効果的な介入を行う一助となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、本研究は概ね2つの段階に分けられる。一年目は第一段階の分析を中心に、二年目は第二段階の分析を中心に進め、三年目には学術誌への投稿や一般社会へのアウトリーチに努めていくというのが当初の予定であった。 一年目にあたるR3年度においては、当初の予定通り、第一段階の研究を遂行した。すなわち、ICEWSデータが存在する1995年から現在までの見出し記事テキストから、各政治アクターの組み合わせごとのデータベース(コーパス)を構築する段階まで研究を進めた。ここでは、まず国際政治学の標準的な慣行にならい、「国家」を1つのアクターと捉え、ある国家と別の国家の組み合わせ(ダイアド)を月ごとに観測単位とする分析を行った(将来的には、アクターと時間単位を更に細分化していく予定である)。このように構築したコーパスに対し、半教師付き機械学習の手法の一つである、キーワード付きトピックモデルを適用し、イシューの内容をトピックとして特定していった。この結果、それぞれのダイアド・月ごとに、「どのようなイシューが」「どれほどの濃度で」現れてくるか、またダイアド間の対立と協調の度合いを定量的に把握することができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題二年目のR4年度は、研究計画の第二段階へと進める予定である。すなわち、第一段階で得られた推定結果を独立変数として用い、武力紛争の発生と終結のダイナミクスを予測する統計モデルを構築・改善していくことを目的として研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に生じたごく少額の次年度使用額(951円)は、次年度に使用する予定である。
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