2021 Fiscal Year Research-status Report
How to establish x a regional cooperative framework for diseases preparedness and response in Asia?
Project/Area Number |
21K01349
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
詫摩 佳代 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (70583730)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グローバル保健ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアにおける地域的協力の現状と課題について検討した。グローバル保健ガバナンスの綻びに伴い、欧州、アフリカ、アメリカ大陸では地域的な保健協力が進展してきた。アジアでは2007年以降、毎年、日中韓保健大臣会合を開催してきた。新型コロナウイルス対応を巡っては、2020年5月に日中韓保健大臣会合の特別会合を開催、2021年末の会合ではパンデミック対応への備えや情報共有等の強化を謳った共同声明を採択、また人材育成の促進等の記載を盛り込んだ共同行動計画も採択された。しかし外交的な緊張関係が継続する中で、今後どこまで実態を伴ったものに発展させられるかは不透明である。 新型コロナワクチンを巡っても、中国のワクチン外交を意識して、日米は東南アジアへの支援を重点的に行ってきた。2020年には日本政府は感染症発生時に動向調査や分析、医療人材の育成等を目指してASEAN感染症センターの設置を支援する方向性を打ち出した。このようにアジアにおける地域的保健協力は、日韓関係の緊張の高まりや米中対立、あるいは政治体制の違いを反映する形で、断片的な進展を辿っており、アジアの包括的な地域協力に関しては、ほとんど先が見通せない現状である。他方、地域レベルでの協力の重要性は依然高く、近隣諸国の間で情報共有の制度を整えたり、起こりうる感染症に対して治療薬やワクチンの共同開発を行なったり、緊急時の渡航制限や医療用品・医薬品の供給網についてある程度の仕組みを整えることが望ましい。2022年2月には韓国に中・低所得国のワクチンや治療薬等の開発製造訓練を行う目的で、WHOのハブが設立された。日韓が当該ハブを通じて、途上国の医薬品開発訓練に向けて、協力するなど、日本が韓国や中国とも研究者レベルで非公式の協力を積み上げ、いずれ地域内の何らかの包括的な枠組みにつなげていくことが望ましいと結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに概ね進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
日中韓3ヶ国は2007年以降、尖閣諸島をめぐる問題で日中関係が悪化した2012年を除き、毎年、保健大臣会合を開催してきた。今回の新型コロナウイルス対応を巡っては、2020年5月に日中韓保健大臣会合の特別会合を開催、三か国間の情報やデータ、知識の共有の強化、技術的専門機関間の更なる交流や協力の促進、新型コロナウイルス対策のための情報・経験の共有の重要性を内容とする共同声明が採択された。他方、その後、中国の対応への不信感が募り、また貿易問題や徴用工の問題で日韓関係がギクシャクする中、日中韓保健大臣会合は全く進展がなかった。人の往来が活発な日中韓3カ国の間で、しかるべき備えの体制を構築することは、3ヶ国いずれにも利する。このような視点から、日中韓保健大臣会合を活性化させる具体的方法を探ることに加え、警戒システムの設立など技術的な連携の可能性を探ることも必要だろう。 また、台湾との連携の可能性も探る必要がある。台湾はWHOへの参加が叶わない状態が続くが、今回の新型コロナウイルス対応からも明らかになったように、優れた感染症情報網と対策システムを有している。中国との外交関係上、日本が台湾と公式な協力関係を結ぶことは難しいが、非公式な形での感染症対応協力は可能性として残されている。 以上二つの課題に関し、2022-3年度は該当国のプリペアドネスの現状と問題点を洗い出し、政府関係者や日中韓三国協力事務局、中韓台のCDCへのインタビュー、資料・文献調査などを通じ、実現可能な連携のあり方を導き出す。また前年度に明らかにした東南アジア諸国との連携と、日中韓、日台連携の融合の可能性についても検討する。成果を論文で発表する。
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Causes of Carryover |
海外出張が叶わなかったため、差額が生じたが、2022年度に出張を予定しているので、そちらに利用したい。
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[Book] 米中分断の虚実2021
Author(s)
宮本 雄二、伊集院 敦、日本経済研究センター
Total Pages
312
Publisher
日経BP 日本経済新聞出版本部
ISBN
9784532358921
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