2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01354
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
福田 円 法政大学, 法学部, 教授 (10549497)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中台関係 / 中国外交 / 「一つの中国」政策 / 「平和統一」政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に米国や台湾の公開公文書や中国の公刊史料、関係者の日記やオーラルヒストリーを利用し、米中国交正常化後の中国の対台湾「平和統一」政策と、米中、米台間の交渉内容を紐解き、それらが1980年代以降の米中台関係の構造をどのよう に変化させたのかを分析するものである。 2021年度は、米中国交正常化や米華断交の経緯が中国共産党内でどのように認識され、それが1979年以降の「平和統一」政策の展開にどのよ うに繋がったのかに焦点を当てた。台湾での史料調査やイ ンタビューを継続しつつ、応募者がこれまで中国、台湾、米国などにて収集した中国共産党の内部史料をもとに、1980年代に「平和統一」政策が打ち出された背景を、国際環境や国内政治情勢との連関に注目しながらまとめた。 2021年度は、特に台湾において、1970年代後半から1980年代初頭にかけての中華民国外交部の文書、蒋経国総統文書、国民党中央常務委員会の会議録などを網羅的に収集し、この時期に対米外交や対中政策の形成に関わった人物へのインタビューを進めることができた。また、その成果を報告する機会を台湾の学術機関にて2回(中国語報告)、スイスの大学が主催するオンライン国際会議にて1回(英語報告)得て、有益なフィードバックを得ることができた。さらに、こうした研究の成果を、中台関係の通史に関わる概説書における記述に反映することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は台湾を拠点に史料調査やインタビューを進めることができたが、他方で新型コロナウイルス流行による渡航規制などにより、中国共産党の内部史料をさらに収集するための海外調査などは行えなかった。そのため、中国共産党が「平和統一」政策を打ち出した背景である、米中国交正常化の経緯に関する調査は進み、それに対する台湾の反応などについて多くの新たな知見を得ることができたものの、共産党内部で「平和統一」政策を打ち出すに至ったプロセスについて、踏み込んだ分析をするには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
中国の「平和統一」政策を台湾の蒋経国政権はどのように受け止めたのかという点に焦点を移し、研究を継続する。「平和統一」政策について台湾の蒋経国政権が「交渉せず、談判せず、妥協せず」の三不政策で応じたことはよく知られている。しかし、その背景にはどのような認識があり、中国政府から次々となされる交渉の呼びかけにどのような方法で対応したのかについては、明らかになっていないことも多い。今後も台湾での史料調査やインタビューを中心とし、 米大統領図書館での調査が可能となるタイミングも見計らいながら、これまでに収集した共産党や国民党の内部史料なども活用して、蒋経国政権の対応の実態をまとめたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行のため、台湾以外での海外史料調査をほとんどできず、国際会議への参加も全てオンラインで開催されため。また、年度のうち多くの期間を台湾を拠点に活動していたために、日本の研究室に備える物品の購入なども見送ったため。令和4年度以降は、まず次年度使用額を使用して、研究に必要な備品や書籍を法政大学の研究室に備え、昨年度行えなかった海外史料調査を行える機会を模索する。とはいえ、台湾や米国での海外調査をどの程度計画通りに行えるのかは、未だ不透明であるため、研究期間を延長することも視野に入れ、人件費を積極的に使用して、既に収集した史料やインタビュー記録の整理に力を入れる。
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Research Products
(6 results)