2022 Fiscal Year Research-status Report
A Dilemma between Alliance and Nuclear Disarmament-Nonnuclear Policies: The United States and Civil Society in Japan, Australia, and New Zealand, 1985-2020
Project/Area Number |
21K01359
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上村 直樹 南山大学, 外国語学部, 教授 (50275400)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 核軍縮 / 同盟 / 核抑止 / 市民社会 / 日本 / オーストリア / ニュージーランド / 米国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国と日本・オーストラリア(豪州)・ニュージーランド(NZ)3国との間の同盟と核軍縮をめぐるジレンマに関する歴史的・理論的研究であり、当該4国の公文書館等での資料調査や政府・非政府関係者等との聞き取り調査を行う一方、上記4か国の研究者等との意見交換によって同盟・核抑止・核軍縮・市民社会論等に関する理論面での理解を深めることによって、本問題の解明を目指すものである。特に本研究においては、以前の研究で筆者が重点を置いていた市民社会が政府に求める核軍縮の側面だけでなく、そうした側面と各国の同盟政策や核抑止戦略、安全保障政策全体との関係の解明に重点を置いている。 2022年度研究を進める中で、この後者の点に関して、1985年から2020年に至る各国の外交安全保障政策の大きな流れを具体的政策に実証的に裏付けていく必要が痛感され、当該4か国が毎年のように公表する外交安全保障関係の白書等や核不拡散・軍縮関連文書とともに、国防関係の白書や戦略概念等の文書についての読み込みに追われた。これら政府文書の多くはウェブ上で公開されており、その読み込みが今後の本格的な政府関係者等とのインタビューや公文書館等での資料調査の前提となるとして、2022年度は海外での長期の調査研究が依然難しかったこともあり、こうした基礎作業に改めて集中することとした。 また日本に関しては、2020年度末に本助成開始直前に広島・長崎と東京で行った聞き取り調査の内容分析とともに、2021年度末に東京方面への出張で行った外交史料館での初めての資料調査や外務省等での予備的な聞き取り調査、更に軍縮・反核平和NGO等の関係者との聞き取り調査結果についても検討を続けた。なお前年度購入したNGOピースデポの2001~19年度の『核軍縮・平和イヤブック』全15巻は核軍縮関連情報の宝庫であり、その前後の巻と併せて読み込みに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、2022年度は、本テーマに関する各国の基本的な政策の流れおよび市民社会側の動きの把握といった基礎的な作業に当初の想定以上に多くの時間を割かざるを得なかった。そして、海外での本格的な調査研究がコロナ禍の余波もあって依然として難しかった面もあり、改めてこうした基礎的な作業に重点を置くこととした。こうした作業に関しても、本研究の対象国の多さ(日・米・豪・NZの4か国)と研究対象期間の長さ(1985~2020年)もあっていまだ道半ばであり、現時点では学会発表や論文等の具体的成果を生み出すには至っていない。但し、上述のように海外での本格的な研究調査に必要な政府公開文書やNGO関係資料等の読み込みや当該4か国の同盟・核軍縮等に関する文献や軍縮・核抑止・同盟・市民社会等に関する理論的文献等も読み進めており、2023年度から在外研究の準備ができつつあると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に関しては、これまでのウェブ等での米・豪州・NZ・日本の政府文書や非政府組織等の資料調査や関連文献の読み込みを踏まえて、海外での調査・研究を本格化させたい。具体的には今年前半に豪州とNZで本格的な調査研究を予定している。本来、海外調査は米国を先に行う予定であったが、客員研究員として受け入れ予定の研究機関の事情により(新たな研究施設への移転)、豪州とNZを優先することとなった。 両国へは、本務校の「短期海外研究出張」制度等も利用して今年前半に夏休みも含めて3か月ほどの調査を行う予定であり、豪州ではキャンベラのオーストラリア国立大学(ANU)戦略防衛問題研究所(SDSC)に客員研究員として所属し、同大、同研究所での研究者との意見交換や国立公文書館等での資料調査及び政府関係者等との聞き取り調査を行い、反核平和運動の中心シドニーやメルボルン等でも聞き取り調査を行う予定である。またNZではウェリントンのヴィクトリア大学戦略問題研究所(SSC)に客員研究員として所属し、同大、同研究所での研究者との意見交換に加えて、国立公文書館等での資料調査と政府関係者等との聞き取り調査を行い、また反核平和運動の中心クライストチャーチやオークランド等でも聞き取り調査を行う予定である。 なお米国に関しては、可能な限り今年度末に向けて研究出張を行い、ワシントン特別区を起点に国立公文書館での資料調査に加え、米国政府関係者やNGO関係者、シンクタンク・大学等の関係者からの聞き取り調査や意見聴取・交換等を行い、可能であれば地方の関係大統領の資料館等で資料調査を行う予定である。また日本に関しても海外調査研究の合間を縫って、外交史料館での資料調査を本格化させる一方、外務・防衛両省関係者及び米・豪・NZ在日大使館関係者、更に反核平和団体・大学・シンクタンク関係者等との聞き取り調査や意見聴取・交換等も行う。
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Causes of Carryover |
2022年度も前年度に引き続き、コロナ禍の影響等もあって予定していた米国や豪州、NZへの調査研究出張ができず、その分の予算が全額未使用となった。また国内分の研究調査出張に関しても、上記「研究実績の概要」でも述べたように、予定していた東京、広島、長崎への再度の調査出張の前に前回の調査結果の精査と研究自体のさらなる進展が必要と判断されたため、海外分と合わせて研究調査出張費旅費がすべて未使用であった。 2023年度は、「今後の発展方策」でも述べてように、まずは年度前半に豪州、NZに3か月ほどの長期研究出張を予定しているほか、年度末に向けて可能であれば米国への調査研究出張を行い、国内の出張とあわせて、旅費の未使用分を積極的に活用して研究を進める予定である。
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