2023 Fiscal Year Research-status Report
A Dilemma between Alliance and Nuclear Disarmament-Nonnuclear Policies: The United States and Civil Society in Japan, Australia, and New Zealand, 1985-2020
Project/Area Number |
21K01359
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上村 直樹 南山大学, 外国語学部, 研究員 (50275400)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 核軍縮 / 同盟 / 核抑止 / 市民社会 / オーストラリア / ニュージーランド / 日本 / 米国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国と日本・オーストラリア(豪州)・ニュージーランド(NZ)3国との同盟と核軍縮をめぐるジレンマに関する歴史的・理論的研究であり、当該4国の公文書館等での資料調査や政府・非政府関係者等との聞き取り調査とともに、4か国の研究者等との意見交換によって同盟・核抑止・核軍縮・市民社会論等に関する理論面での理解を深めることによって、本問題の解明を目指すものである。特に本研究においては、以前の研究で筆者が重点を置いていた市民社会が政府に求める核軍縮の側面だけでなく、そうした側面と各国の同盟政策や核抑止戦略、安全保障政策全体との関係の解明に重点を置いている。 2023年度は、前年度に引き続き、核軍縮と安全保障政策全体との関係への理解をより深めるべく、1985年から2020年に至る関係各国の国家安全保障戦略や国防白書や戦略概念等の文書の読み込みを続けたが、研究上特に大きな進展が見られたのが、科学研究費補助金及び南山大学の各種研究助成等を用いて2023年6月初めから9月初めまで行った豪州とNZへの3か月間の調査研究出張であった。コロナ禍で中断されていた現地での調査研究がようやく可能になったことにより研究の大きな進展が見られた(本出張成果の詳細は、「7.現在までの進捗状況」を参照)。 また日本に関しては、引き続き外務省等の政府関係や日本国際問題研究所等の研究所関係、そして軍縮関係NGO等のホームページからの核軍縮・安全保障関連の公開情報の収集と分析を行うとともに、南山大学の研究出張費を用いて外務省外交史料館で日本と豪州・NZ・米国との核軍縮や安全保障関係に関わる1980年代から1990年代初頭にかけての外交資料の調査を2023年11月と2024年3月の2度にわたって行い、多くの外交資料を収集するとともに、日本に関して利用できる外交資料の全体像がはっきりしてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述したように、2023年度にようやく本テーマに関する海外での本格的な調査研究を豪州とNZで行うことができた。豪州では、6月5日から7月17日までキャンベラ市にあるオーストラリア国立大学戦略防衛研究所(SDSC)において客員研究員として、NZでは、7月19日から8月31日までウェリントン市にあるヴィクトリア大学戦略研究所(CSS)において客員研究員としてそれぞれ調査・研究を行った。両研究所においては、それぞれ所属研究者及び本研究に関係する大学関係者等との意見交換や研究会に積極的に参加して研究を深めるとともに、政府関係者やNGO関係者からの聞き取り調査やシンクタンク関係者との意見交換等も行った。また両国の国立公文書館(NAAとANZ)においても、資料整理や公開の進んでいる1980年代から1990年代初頭について資料調査を行った。なおCSSにおいては、安全保障のジレンマという観点から対米同盟・安全保障関係を含めた日・豪・NZの安全保障政策の比較研究に関する発表を行い、貴重なコメント等を得た。またSDSCに関しても、帰国後にANU日本研究所主催のJapan Seminar Seriesで日米の外交安全保障の伝統を比較した研究発表をオンラインで行った。 但し、本研究の対象国の多さ(日・米・豪・NZの4か国)と研究対象期間の長さ(1985~2020年)もあって調査研究はいまだ道半ばともいえ、ようやく研究会等での発表や学術論文等の具体的成果を生み出し始めたところである。そこで、2024年度は、次の「8.今後の研究の推進方策」で詳しく述べるように、コロナ禍によって何度か断念を余儀なくされた米国への調査研究出張を年度後半に行い、今年1年間の延長期間を活用して、コロナ禍で失われた2年近くの遅れを少しでも挽回すべく最大限の努力を払うつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度の豪州・NZでの調査研究を踏まえ、米国での調査研究を本格化させたい。具体的には既に受け入れの内諾を受けているワシントン特別区のジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)に客員研究員として所属し、同大、同研究所での研究者との意見交換や国立公文書館等での資料調査及び政府関係者やNGO等との聞き取り調査を行い、関係者、シンクタンク・大学等の関係者からの聞き取り調査や意見聴取・交換等を行い、可能であれば地方の関係大統領の資料館等で資料調査を行う予定である。 その間、必要に応じて日本での外交史料館等での追加調査を行う。また年度を通じて豪州・NZ、そして米国での調査研究、および日本国内での調査研究の成果を個別の論文にまとめていく作業を行うとともに、年度末に向けて研究全体の成果の取りまとめを開始し、最終報告書の作成へとつなげていきたい。
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Causes of Carryover |
2023年度は、コロナ禍のために遅れていた海外研究出張のうち、ようやく豪州とNZへの調査研究出張が可能になったが、既に昨年度の実施状況報告書でも説明したように、最初に予定していた米国への調査研究出張は事情により延期せざるを得なかった。そこで2024年度には、積み残しとなっていた米国への調査研究出張を行う予定であす。既に受け入れ先の研究機関とは受け入れに向けての段取りが進んでおり、旅費の未使用分を基本的にすべて用いて完成に向けて米国での調査研究を進める予定である。
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