2021 Fiscal Year Research-status Report
中華民国時期における国際主義ーー周コウ生を中心とした考察
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21K01362
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森川 裕貫 関西学院大学, 文学部, 准教授 (50727120)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 周コウ生 / 中国近現代史 / 国際法 / 国際政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国における「国際法の父」と称される周コウ生は、国際連盟に関する著作『万国連盟』(1922年)を発表して以来、『現代国際法問題』(1931年)や『国際政治概論』(1930年)など、国際法や国際政治に関する単著を1940年代にかけて多数公刊し、中華民国時期の国際法・国際政治研究を主導した。また、1910年代半ばから1940年代にかけて、『太平洋』、『現代評論』、『北京大学社会科学季刊』など、複数の雑誌に継続的かつ精力的に評論を執筆している。それら膨大な著述を網羅する全集や著作集は、現在までのところ刊行されていない(『周コウ生文集』(1993年)が収録するのは、ごく一部に過ぎない)。しかし、言うまでもなく周コウ生研究にとってまず重要であるのは、周自身の著述である。そこで2021年度は、周コウ生の手になる著述を可能な限り収集することに力を注いだ。その上で、その史料群の一部の分析も開始している。 特に注目したのが、『万国連盟』や先行する時事評論に表現されている周コウ生の国際協調を支持する言論である。中国ではパリ講和会議を前に、国際協調を擁護する論調が高揚したこと、しかしパリ講和会議が中華民国の権利を十分に尊重しないという事実が明確になって以降、それに失望した知識人が国際協調を体現していたアメリカのウィルソン大統領に失望し、代わって新しく登場したソヴィエト・ロシアに期待を寄せたことが知られる。周の言論が興味深いのは、パリ講和会議の現実が明らかになって以降も、国際協調を擁護する姿勢が大きくは変化していないということである。 なぜ、周の姿勢は大きくは変化しなかったのか、こうした立場は当時にあってどのような位置を占めるのかといった点については、彼が1920年代半ばから展開する革命外交に関する議論と併せて引き続き考察を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周コウ生の著述の収集、さらには彼が自身の議論を組み立てる上で参照した著述の収集については、おおむね順調に進んでおり、その一部の考察もすでに開始している。ただし、予定していた海外での資料調査がかなわなかったため、まだ入手に至っていない著述も存在する。それらについての入手を進めていく予定である。 なお、史料収集の過程で、周コウ生と論争を展開したことで知られる胡適に関する史料も入手することができた。それに関して考察を行い、「中華人民共和国における胡適の著述の編纂と附随する問題」(『関西学院史学』第49号)を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した史料の検討を引き続き進める。 特に着目したいのが、1920年代半ば、国民政府が展開した革命外交の下で、周コウ生がどのような主張をしていたのか、ということである。周コウ生は、『解放運動中之対外問題』(1927年)、『革命的外交』(1928年)という著作を発表しており、そのなかでは中国ナショナリズムの顕現とも言える国民政府による革命外交を力強く支持している。しかし、彼は1910年代末以降、国際連盟を中心とする国際協調を擁護もしていた。一見すると必ずしも一致するとは言えない二つの立場を、周がどのように調整していたのかを考察し、当時の中国におけるナショナリズムと国際協調主義の複雑な関係の諸相を明らかにしたい。
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Research Products
(1 results)