2023 Fiscal Year Research-status Report
中華民国時期における国際主義ーー周コウ生を中心とした考察
Project/Area Number |
21K01362
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森川 裕貫 関西学院大学, 文学部, 教授 (50727120)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 周コウ生 / 満洲事変 / 横田喜三郎 / 国際連盟 / 国際主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、周コウ生が満洲事変勃発に直面して執筆した評論を中心に分析を行った。満洲事変以降、周は「東省事件与国際連盟」(1931-32年)など、多数の評論を発表している。それらは日本側の挙動を、国際法を論拠としつつ厳しく批判するものであった。興味深いのは、周が論拠とする外国人学者の所説のなかに、日本を代表する国際法学の大家である立作太郎の議論と、新進気鋭の国際法学者として注目されるようになっていた横田喜三郎の議論が含まれていたことである。 二人のうち、横田の議論に周が着目することは不思議ではない。横田は満洲事変において日本の軍隊が南満州の要地を占領したことは自衛のためのやむを得ない行為であったとはいえず、国際連盟が事変の拡大防止と撤兵を勧告してきたことも当然視した。これは、当時の日本の国際法学者、さらに知識人としてはかなり珍しい見解で、日本国内では多くの批判も生じたが、中国側にとっては歓迎しうる議論であり、したがって周も利用したのだろう。 これに対し、周が立に注目するのは、一見不可解にも思える。立は、満洲事変における日本の軍隊の行動を自衛権の行使としてとらえ、それが不戦条約や国際連盟規約に違反するものではないと主張したことで知られる。これ自体は、当時の日本の国際法学界における代表的見解だったが、中国側にとっては受け入れがたいものである。しかし、周はそれを承知で、あえて立の所説(具体的には『平時国際法論』1930年)にも触れながら事変批判を展開することで、自身の議論の説得力をより高めようとしていたように考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周コウ生の満洲事変に関する言論を収集し、その検討を進めることができた。また、関連して満洲事変に対する横田喜三郎の言論が、周やそのほかの中国の知識人に注目されていたことを明らかにし、成果として「中国における横田喜三郎評価」という論文にまとめて発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
周コウ生は1940年代になってから、第二次世界大戦終結後の世界、そして東アジアの国際秩序のありようを見据えた著述を多数発表するようになる。こうした著述のなかには、Winning the Peace in the Pacific (1944)など、英文の著述も複数含まれる。そうした著述の検討を通じ、周の国際秩序の見方が1940年代に具体的にどのような展開を見せたのか、そしてそれはそれまでの周の国際秩序に対する見方とどのような関係に立つのか、考察していく。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた一部の中国語文献の入手が年度内には困難となったため、次年度使用額が生じた。購入手続きを進め、入手次第、研究の推進に活用する予定である。
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