2021 Fiscal Year Research-status Report
貿易戦争と政治的支持関数に関する2レベルゲーム分析
Project/Area Number |
21K01370
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石黒 馨 神戸大学, 経済学研究科, 名誉教授 (20184509)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 貿易戦争 / 政治的支持関数 / 2レベルゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、貿易レジームの相違や各国の政治経済制度の相違を考慮しながら、大国間の貿易戦争が、日本のような第三国の国内政治や政府の政治的支持関数に及ぼす影響について明らかにすることである。本年度は、特に以下のような点について検討した。 第1に、貿易戦争に参加しない日本のような第三国への貿易効果、特に最適関税率による間接的な貿易効果を理論的に分析できるような貿易戦争の3国モデルを検討した。第三国を含む貿易戦争のモデルを構成する際に、従来の2国間の貿易戦争のモデルを2レベルゲームの枠組みで政治経済的に非対称な3国間の貿易戦争モデルに拡張することを試みた。既に構築されている対称的な2国間の貿易戦争モデルを再構成すると共に、さらに非対称的な3国間の貿易戦争モデルへ拡張することを試みた。ここで取り上げた政治経済的な非対称性は、3国間の国内経済の非対称性と国内政治の非対称性である。国内経済の非対称性については生産コストの相違を考慮したモデルを構成し、国内政治の非対称性については利益集団の政治圧力の非対称性を取り上げた。これらの政治経済的な非対称性が各国の政治的支持関数に及ぼす影響を分析できるような3国間の貿易戦争のモデルを検討した。 第2に、貿易戦争が日本のような第三国の国内政治や政府の政治的支持関数に及ぼす影響について実証的な研究のための基礎的な検討をした。政治的支持関数に及ぼす影響を実証的に検討するために、各国の政治的支持関数の形状を推計するために必要な各国のマクロの政治経済データを収集した。各国のマクロの政治経済の既存のデータについては、この研究目的に沿った相応しいデータを収集するのはかなり困難なことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、貿易戦争の理論的な考察については以下の通りである。従来の2国間の貿易戦争のモデルを2レベルゲームの枠組みにおいて、政治経済的に非対称な3国間の貿易戦争のモデルに拡張することを試みた。この点では概ね順調に進行している。第2に、貿易戦争が日本のような第三国の国内政治や政府の政治的支持関数に及ぼす影響について実証的に研究するための調査については、各国のマクロの政治経済データの収集には時間を要している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の理論的な研究方向は、従来の研究を2レベルゲームの枠組みで政治経済的に非対称な3国間の貿易戦争モデルに拡張することである。既に構築されている2国間の貿易戦争モデルを再構成し、さらに非対称的な3国間のモデルへ拡張する。その際に考慮すべきは以下の点である。第1に、多様な貿易レジームの比較ができることである。そのための最低限の貿易参加国は3国であり、より現実に近い状況を得るためにはn国へ拡張する必要がある。第2に、3国間の国内経済の非対称性の相違が各国政府の政治的支持関数に及ぼす影響が分析可能なモデルを構築することである。第3に、3国間の国内政治の非対称性の相違が各国政府の政治的支持関数に及ぼす影響が分析可能なモデルを構築することである。
|
Causes of Carryover |
物品費用の端数。
|
Research Products
(1 results)