2021 Fiscal Year Research-status Report
The Transformation of Conflicts / Wars and Japan's Security: Focusing on the Case of the Former USSR
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21K01373
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
廣瀬 陽子 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (30348841)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ハイブリッド戦争 / ロシア / ウクライナ / 旧ソ連地域 / 安全保障 / ルスキー・ミール / サイバー戦 / 情報戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現在、世界の安全保障の大きな脅威となっているロシアの「ハイブリッド戦争」、すなわち正規戦・非正規戦を組み合わせた戦闘が、ロシア外交の中で、どのような位置を占めているのか、またロシアが実際に何を行い、どれ程の影響を諸外国に与えているのかを包括的に検討するものである。さらに、加えて、それらの分析を通じ、今後のロシアのハイブリッド戦争の展開可能性を分析しつつ、取りうる対策についても検討する。 本来の予定では、研究は文献調査と現地調査で進め、フィンランドの研究所や日本企業との共同研究も行いつつ、それらを有機的に分析して研究結果を導き、ロシア周辺の日本を含む極東アジアの安定と平和のための政策提言も行なうということであったが、新型コロナウイルス感染症問題により、現地調査を行うことができなかった。そのため、海外調査についてはオンラインによるインタビュー調査や国際会議・ディスカッションなどで補填した。そして、共同研究は全てオンライン・ミーティングを活用する形で進めた。 そして、多くの論文やエッセー、口頭での研究成果発表などで成果を発表することができた。特に、日本にとってもハイブリッド攻撃のリスクは少なくなく、それを極めて深刻に受け止め、対策を講じるべきだというメッセージは大変広く発信できたと思う。 他方、ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻したことは、本研究にも大きな影響を与えた。ロシアの行動が全て非合理的であり、これまでロシアの行動パターンだとして理論化していたモデルが完全に当てはまらなくなってしまった。そのため、ハイブリッド戦争の研究を通じて、ロシアの今回の行動が、行動モデルの変容なのか、それとも例外なのかをきちんと分析する上で、今後のロシアの動きを説明できるような新たなアプローチを始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、現地調査はできなかったものの、現地調査ができない部分をオンラインでのコミュニケーションによって極力補填しつつ、文献調査や状況の分析などを行うことによって、ハイブリッド戦争の現状把握や比較分析については、かなり多くの進展があった。 まず、ハイブリッド戦争の具体例をより多く検討し、また、ハイブリッド戦争に関するNATO(北大西洋条約機構)の対応や見解についてはかなり詳細な調査を行った。その結果、ハイブリッド戦争の実態、イメージをより具体的なモデルで説明できるようになり、それによって、現状分析がより的確にできるようになったことは大きな進展である。 他方で、昨年度はNATOがハイブリッド戦争だと位置付けるベラルーシによる「難民危機」(中東などからの難民を、国境を接するEU加盟国であるポーランドやリトアニアに送り込んで不安定化を達成する)やロシアによるウクライナに対する軍事的脅迫(2021年春及び同年秋から21年2月23日)、そして軍事侵攻(22年2月24日以後)は、極めて重要な分析対象となった。これらの出来事により、国際社会のハイブリッド戦争に関する認識に大きな変化が生じたことは間違いなく、特にロシアのウクライナ侵攻は国際政治そのもののパラダイムシフトを引き起こしたと考えられる。そこで、新たな国際社会のパラダイムを検討する作業にも入った。この新たな展開は、現在進行中であり、分析を行うにはまだ時期尚早であるが、その都度の展開を見据え、今後の本格的な分析に向けての情報収集など、分析のための準備を進めているところである。 さらに、大きなパラダイム分析の準備と並行し、ロシアのウクライナ侵攻については常時、現状分析をおこなっており、その分析結果については、政府等へのコメントペーパー提出や面談等を通じての情報のインプット、メディアでの発言等によって、都度、発信を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
大変皮肉なことではあるが、ロシアのウクライナ侵攻はハイブリッド戦争や今後の世界の秩序を検討する上で、極めて貴重なケーススタディの対象となる。そこで、本研究ではロシアのウクライナ侵攻に分析の中心軸を据え、その分析からハイブリッド戦争の趨勢と実態、それに対する諸外国の態度と対策、国際社会の動きなどを導き出して、ハイブリッド戦争に関する議論、そして国際政治に関する議論で新しい見解を打ち出すことを目指していく。 研究方法としては、まず文献調査として、より多くの書籍や論文などを検討、分析してゆく。また、2022年度は海外出張も可能となると考えられるため、ハイブリッド戦争への対応では世界の最前線の活動を行っているNATOやフィンランドのハイブリッド脅威対策センターなどでの調査をはじめとし、海外での最先端の分析内容等を調査するだけでなく、実際にハイブリッド戦争の被害に遭っている国々の中で最も調査がしやすい(新型コロナウイルス感染状況も含んだ形での検討を行う)対象を選び、現地調査も行いたい。 共同研究も継続してゆく。フィンランドのハイブリッド脅威対策センターとの共同研究では、欧州の反応・対応等の分析を深めてゆく。また、株式会社LACとの共同研究では、中露のサイバー攻撃の比較検討などを通じ、ハイブリッド戦争の中でも大きな重要性を占めるサイバー攻撃に関する多面的な理解を深める。 そして、2022年10月には、日本国際政治学会年次大会の共通論題で、その中間報告的な報告を行う予定である。 また、現状分析については、より多くの媒体で成果発表をしてゆきたいと考えている。中間報告ながら、研究の状況を発表してゆくことで、それに対するレスポンスや反論も受けることができるため、さらに議論を洗練させていくことが可能となると考えるからである。また、最新の分析を発表する事により、政策的な貢献もできると考える。
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Causes of Carryover |
本研究は、海外調査を極めて重視しているが、2021年度は新型コロナウイルス問題で海外出張ができなかったため、次年度に研究費を繰り越す事にした。2022年度については、新型コロナウイルス問題は未だに完全に解決していないとはいえ、諸々の規制がかなり緩和され、海外調査が現実的に検討できるようになったことから、繰越した資金で海外調査を充実した形で行いたいと考えている。
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Research Products
(8 results)