2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01374
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鈴木 一敏 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (90550963)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | FTA / 通商戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の内容は、大きく3つの段階に分けられる。第一は先行研究などを基にFTA締結が以後の交渉に与える影響を整理し類型化を進めること、第二は、そうした類型を政策担当者や利益団体がどの程度認識していたかを調査すること、第三は、2000年代の日本のFTA政策を上記の観点から総括的に分析することである。 これらは必ずしも年度に対応しているわけではないが、初年度である2021年度は結果的に第一段階の研究が中心となった。具体的には、FTA交渉の前後関係が交渉力に与える影響について検討を行うため、文献・事例の調査とインタビュー調査を行った。日本がFTA政策に取り掛かった2000年代初頭について、シンガポール、メキシコ、マレーシア、タイ、フィリピンなどの国々との交渉過程の調査を行い、交渉相手国の前後関係や他国との同時期の交渉の進捗が日本の交渉力に影響を与えた場面を抽出した。 日本がFTAを推進するためには、農業セクターの反対をいかに克服するかが大きな課題であった。その過程で、農業と工業を分離して交渉するための様々な戦術が、試行錯誤と学習のなかから徐々に形成されていったことが分かった。現在、複数のFTA交渉を超えて形成されていった日本の初期の交渉スタイルについて総括した論文を執筆中である。 これに加えて、インタビュー調査の対象者に講演会への登壇を依頼し、その成果を他の研究者も引用しやすいように論文形式にまとめて出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献や資料を用いる調査についてはおおむね予定通りに進捗している。インタビューを複数予定していたが、新型コロナウィルスの流行によって対面での実施が困難となり、インタビューや講演会が当初予定していたほどは実施できず、この面では遅れは否めない。他方で、実施にこぎつけたインタビューおよび講演会に関しては、対象者との綿密な打ち合わせを経て、他の研究者も利用しやすい形で出版することができた。この点では予定よりも進んでいる。総合すると、おおむね順調だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の経済外交に関わる書籍の分担執筆を依頼され、これまでの本研究の成果の一部を出版する良い機会であるので、受諾している。本年度初頭はその執筆に集中する予定である。その後は研究計画で予定した通り、一次資料、文献、インタビュー等に基づいた調査を進めてゆく。交渉戦略というセンシティブな内容も含むインタビュー調査であり、信頼関係が重要なので、特に初対面の対象者とは出来る限り対面で行なった方が効果的だと考えている。機を見て進めるようにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの流行により出張によるインタビュー調査や対象者の招聘による講演会の実施が限られたため、旅費及びインタビュー調査のテープ起こし等の予算が執行しきれなかった。可能となり次第、対象者と相談のうえ、順次実施する予定である。
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