2023 Fiscal Year Research-status Report
The Council of the League of Nations: Norms and Collective Legitimization
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21K01377
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
篠原 初枝 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (30257274)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国際連盟 / 理事会 / 満州事変 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際連盟理事会が1920年代に、組織を明確にし、また理事会での会議実績を積み重ねることで、国際組織としての国際連盟を実際に正当化する機関としての役割を果たしていたことの検証を行った。具体的には連盟理事会の議事録での議論を詳細に検討することで、理事会での 各国代表の発言の一貫性、その論理の妥当性が鮮明に理解されることがわかった。 理事会の機能は、アジェンダの設定、議論による意見集約、決議案の提議、採択といったことにあることもわかってきた。連盟規約によって、理事会に提訴できる問題の範囲は明確に規定されているが、それをどの加盟国が提起し、どのような論旨で議論を展開するかによって連盟理事会の関心の高い案件となるかが決まってくる。 重要な案件となった場合には、理事会構成メンバーが活発に意見を交換し、その中で意見が集約されていく。説得性、妥当性のある意見にはメンバーが賛成をするし、そうでない場合には、批判されることもある。すなわち、連盟理事会での議論は、多国間外交における合意形成の場である。 その合意を明確な形に残すために、決議案が作成され、採択されていく。またその決議案に対して議論が重ねられ、その決議に反対する加盟国は反対論を述べるがその意見に合理性が認められない場合は、その意見は批判される。決議案の採択にあたっては、たとえば、9対1という形で記録に残るので、その議論プロセスは透明性が担保される。 このような過程は当然のものともいえるが、これまで実証的に、理事会、多国間外交、決議の採択という側面を分析して、国際組織の正当性を議論をしてきたものはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった「国際連盟の正当性」について英語で論文(book chapter)を記すという目標は達成された。この24年度はすでに発表した論文を発展させる形で、国際組織と理事会という点から理論的考察を深めたい。これは当初の目的を越えて派生した論題である。
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Strategy for Future Research Activity |
国際組織における正当性、理事会の機能が当初の研究目的であった。それは実証的には満州事変期の議論を検討することで明らかになった。次のプロセスとしては、連盟理事会の機能をさらに、国際組織論の観点から理論的に検討する。集団的正当性が、どのような要因によって形成されていくのか、連盟規約にもとづく制度的正当性、理事会の議論という正当性、またその議論が生み出した決議案の履行という正当性といったように、理事会が有すると思われる正当性について、理論的な検討を深めたい。 満州事変以外の事例を検討する場合は、すでに実証研究をおこなってきた少数民族問題についても考察する。
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Causes of Carryover |
23年度9月から、大学業務に携わることになり、そちらの仕事に慣れるのに時間を取られ、23年度後期はあまり研究の時間がとれなかった。
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