2021 Fiscal Year Research-status Report
China's Regionalist Diplomacy in East Asia and Its Impact on the Korean Peninsula
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21K01378
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
李 鍾元 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (20210809)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中韓関係 / 中朝関係 / 韓国外交 / 地域主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度に当たり、主として「一帯一路」など中国の地域構想とそれに対する朝鮮半島の南北(韓国および北朝鮮)の政策や対応に関する文献資料の体系的な収集と分析を行った。文献資料としては、中国や韓国の研究文献に加えて、各国の政策シンクタンクの報告書など刊行物の収集に力を入れた。近年、各国の政策研究機関のウェブサイトは充実しており、刊行物の多くはオンラインで検索できるようになっている。 中国の研究文献について、主な学術雑誌を網羅するデータベースCNKIを利用し、韓国の図書や論文については、DBpiaやKISSなどを活用した。北朝鮮については、北朝鮮の刊行物は調査が難しく、韓国政府や研究機関が公開している文献資料に依存せざるをえなかった。 中国や韓国での現地調査で、政策担当者や研究者などへのインタビュー、資料収集などを計画し、北京や瀋陽、ソウルの関係者との協議も続けたが、新型コロナ感染状況が続き、海外出張が不可能になり。断念せざるをえなかった。 初年度の研究成果としては、韓国の東アジア地域主義外交に焦点を合わせた論考として、「東アジア共同体形成の現状と課題」(広島平和研究所編『アジアの平和とガバナンス』有信堂、2022年3月、205~214頁)を刊行した。また、北朝鮮の核問題の地域的構図を分析したものとして、「朝鮮半島核危機の前史と起源―冷戦からポスト冷戦への転換を中心に」(『アジア太平洋討究』第44号、2022年3月)、51~76頁を発表した。 関連テーマの研究発表としては、早稲田・北京大学ワークショップ(2021年10月22日)で、「A Dolphin Caught between Whales?: ROK's Regionalist Diplomacy as Middle Power Strategy」を英語で行い、中国の研究者との討論を踏まえ、現在報告集の出版を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に当たり、当初の計画で重点を置いた研究文献や関連資料の体系的な収集、分析は概ね順調に進展している。まず、韓国側の資料のうち、学術書や学術論文についてはDBpiaやKISSなどオンラインDBが充実しており、網羅的な調査と収集が可能であった。また、政府系シンクタンクも積極的に研究調査報告書を開示している。とりわけ、「一帯一路」への部分参加など中韓間の経済協力については、対外経済研究院(KIEP)が韓国側事務局になっており、両国の政策や実際の取り組みに関する分析を多く発表している。 一方、中国側の資料については、公式の文献は政府や関連機関のウェブサイトで入手可能だが、シンクタンクの刊行物の公開は少ない。そのため、現地で専門家のインタビューが必要だが、新型コロナの感染状況が安定せず、実施することができなかった。中国の学術論文については、主要学術雑誌を網羅するオンライン・データベースCNKIを活用して、体系的な調査と収集ができた。「一帯一路」については、中央政府のみならず、各省が積極的に計画や実施状況について報告書をオンラインで開示しており、北朝鮮の接している東北三省の公式サイトから有益な資料を収集することができた。 当初の計画では、中国と韓国現地での調査に重点を置いたが、それを実施できなかったことで、深度ある分析や文献の収集の面では課題が残った。その中で、不十分ではあるが、早稲田大学と北京大学の共同ワークショップで発表する機会を与えられ、韓国の地域主義外交の展開と中国との関係について英文で報告を行い、北京大学の研究者と意見交換ができたことは大きな成果であった。 韓国の専門家とは、韓国の外交安保研究院やソウル大学日本研究所、民間研究機関であるSAND研究所などが主催する国際会議に招待され、政策論的な視点を交えた研究報告と意見交換を行う機会を持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第1次年度の研究調査を踏まえ、次年度には、各国の文献資料の収集と分析を進めるとともに、初年度に実施できなかった中国と韓国での現地調査と面談を行う予定である。 文献資料の収集・分析では、中国側の研究文献に加えて、中国人研究者が英語で発表した図書や論文を網羅的に調査、収集する。初年度にもProQuestなど基本的なデータベースを利用したが、さらに範囲を広げて、主として中朝関係に焦点を合わせて、包括的な調査を行う。また、各省レベルの公開情報や資料についても、中国の研究者らの助言を得て、より深度ある調査を試みる。 そのため、今年度には、韓国および中国での現地調査をできる限り実施したいと考えている。昨年度以来、中国の朝鮮半島政策に詳しい北京や瀋陽などの研究者や専門家と相談しつつ、調査計画を練ってきているが、それを今年度には実行できることを期待している。とりわけ、「一帯一路」など中国の地域構想に関する北朝鮮の考え方については、中朝関係を熟知する専門家を中心にインタビューを行う計画である。 韓国での現地調査では、文在寅政権が進めた「新北方政策」に焦点を合わせ、大統領直属の「新北方政策委員会」に携わった研究者らに対する面談調査を行う。同委員会は、韓国の地域主義外交の観点から、中国の「一帯一路」構想を含め関連国の政策との連携について、具体的な政策提言を行ってきた。韓国と中国の地域構想の関連という本研究のテーマにもっとも合致する事例として、実証的な解明を進める。 経済の面では、中国の「一帯一路」構想への韓国の関わりが中心となるが、韓国側事務局となっている対外経済研究院の研究者らへの面談調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に、資料収集と関係者面談のため、中国(北京と瀋陽)および韓国(ソウル)での現地調査を計画したが、新型コロナ感染状況が安定せず、海外渡航が不可能になり、実施することができなかったため、旅費の支出がなかった。 初年度に実施できず、繰り越しになった旅費については、今年度の予算に加え、中国と韓国への現地調査に充てる計画である。当初予定していた北京と瀋陽、延辺に加え、韓国との経済関係が活発な上海での現地調査を進める。 また、もともとの計画ではあるが、韓国での現地調査の期間を拡大し、国家記録院や外交史料館など一次史料の調査とともに、韓国の対中政策に関わる研究者や関係者への面談を行う。
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Research Products
(5 results)