2022 Fiscal Year Research-status Report
China's Regionalist Diplomacy in East Asia and Its Impact on the Korean Peninsula
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21K01378
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
李 鍾元 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (20210809)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中韓関係 / 中朝関係 / 韓国外交 / 地域主義 / 北方政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の2年目に当たり、引き続き文献資料の収集と分析を進めつつ、韓国現地における資料調査と面談を実施することができた。本科学研究費に加え、その他の学会招聘の機会などを利用して、2022年度には合計3回韓国に出張し、現地調査を行った。資料収集については、韓国外交史料館で近年公開された韓国政府の外交文書を網羅的に閲覧・収集し、国立中央図書館、国会図書館で研究文献や関連機関の報告書を体系的に調査・収集した。外交史料館で1980年代中盤以後の中韓関係の進展に関する外交文書を収集できたことは大きな収穫であった。あわせて、韓国政府のシンクタンクである外交安保研究院と対外経済政策研究院をはじめ、高麗大学アジア問題研究所、ソウル大学日本研究所など代表的な研究機関を訪れ、学術セミナーなどの場で、韓国の専門家と意見交換を行うことができた。 2022年度の研究成果の公開としては、1990年代初めの米ソ冷戦終結期の韓国外交について、中国や北朝鮮問題に焦点を合わせた報告を国際安全保障学会で行い、それを基にした論考(韓国語)を韓国慶南大学極東問題研究所が刊行する学術雑誌『韓国と国際政治』(2023年3月刊行)に掲載した。その他、中国社会科学院主催のオンライン国際会議、韓国高麗大学アジア問題研究所主催の東アジア共同体フォーラムなどに招待され、東アジア地域秩序の変容の中での日韓関係、世界遺産をめぐる日中韓関係などをテーマに報告を行った。 図書としては、北京大学と早稲田大学が共催した学術会議での報告(2021年度)を基に、韓国の地域主義外交の文脈において、中国の一帯一路政策との関連などを分析した英文の論文を執筆し、学術書の一章として刊行した。また、現在の北朝鮮問題について、米国の政策を中心に韓国や中国の政策を分析した論文を広島市立大学広島平和研究所主催のセミナーで発表し、同研究所刊行の報告書に収録された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の2022年度には、新型コロナ感染状況の安定化に伴い、初年度にはできなかった韓国現地での調査を実施することができた。しかし、中国への渡航には制限が多く、現地調査を見送らざるを得なった。韓国現地調査では、主として韓国外交史料館にて、近年公開された韓国外交文書をほぼ網羅的に調査、収集することができたことは大きな収穫であった。韓国外交文書は30年ルールに基づき公開されており、2022年度には1991年分までが基本的に閲覧できるようになっている。韓国は全斗煥政権期の1983年頃から主として中国との関係改善を視野に入れた「北方政策」を推進し、1991年には自らが主催したAPEC首脳会議で中国・台湾・香港の加盟を実現し、1992年には中国との国交樹立を実現している。1992年分の外交文書は2023年春に公開されており、2022年度の現地調査では閲覧できなかったが、冷戦変容および終結期に、韓国が地域主義外交の枠組みの中で、中国との関係を形成していった初期過程の大部分をカバーする一次史料を収集することができた。他の政策関連文献と合わせて、これらの外交文書を分析することで、韓国の地域主義外交と対中政策に関して、包括的な実証研究の提示が可能であると期待している。 韓国出張では、韓国の対中外交や韓中関係を専門とする韓国の専門家や実務家と面談し、韓国の政策に関する情報収集を行うこともできた。また、韓国語や英語で韓国の地域主義外交に関する論考を発表したことで、韓国の研究者と有益な意見交換を行う機会を得た。 中国現地調査については、中国の出入国に関連して依然として手続き上の困難さがあったために、2022年度には実施を見送った。中国の朝鮮半島政策については、引き続き、中国の研究文献データベースCNKIなどを利用して調査し、中央および地方政府の公式資料の収集をもオンラインを中心に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度にあたる2023年度には、中国での現地調査を実施し、朝鮮半島関連の研究者への面談調査を行うことを計画している。公式刊行物や研究文献は網羅的に収集してきたが、朝鮮半島に関する中国の立場が大きく変わりつつある現状に鑑み、現地調査と面談は欠かせないと考えている。本研究計画の重点は、冷戦終結期以来、韓国が掲げた「北方政策」やその後継構想としての「北東アジア」「新北方政策」などが、中国の朝鮮半島政策といかに関連しているかということにあるがであり、時期的には2020年頃までを対象としている。しかし、2022年の韓国政権交代で韓中関係が大きく変化しはじめており、それ以前の時期の分析のためにも、現在の変化に対する中国側の視点の考察は必要である。 韓国の政権交代による対中政策の変化と、それに対する中国の対応などについては、現地での面談や文献調査などを土台に、地域主義外交という観点からの位置づけを中心とした論考の執筆を進める。 また、韓国外交文書については、現地調査を行い、2023年春に公開された1992年分の外交文書を閲覧、収集する。 このような現状に関する分析を含めつつ、基本的にはこれまで収集した資料や文献を整理し、韓国と中国の地域主義外交および構想がいかに相互作用しているかについて、一定の体系的な枠組みの構築と、具体的な展開過程に関する実証的解明を進める。研究のまとめの段階として、最終的には単行本として刊行を目標に、各時期に関する研究発表や論文執筆を進め、学会やセミナーなどの機会を得て、研究成果の公開に努める。
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Research Products
(7 results)