2022 Fiscal Year Research-status Report
Foreign policy of Japan as a non-permanent member of the UN Security Council
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21K01381
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
村上 友章 流通科学大学, 経済学部, 准教授 (80463313)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カンボジア和平 / 国連平和維持活動 / 国連安全保障理事会 / 冷戦後の日本外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外務省外交史料館所蔵の外交記録ほか国内外の未刊行の一次史料の分析を通じ、国際連合安全保障理事会を中心に、日本が非常任理事国として展開した多国間外交(以下、非常任理事国外交と略)を歴史的観点から再検討するものである。本年度は外交史料館にて数回にわたって資料調査を実施し、新たに公開された外交記録を大量に撮影することができた。その多くが日本が活発な非常任理事国外交を展開しつつも研究上は空白であった1980年代後半の記録(カンボジア問題、イラン・イラク問題、アフガニスタン問題等)であるため、その成果は、今後の研究の進捗に極めて重要な意義を持つ。 また、以上の外交史料館史料および情報公開開示資料を用いて1990年代初頭のカンボジア和平をめぐる安保理における日本外交に関する論稿を準備した。この非常任理事国外交はアジア外交と日米関係が複雑に交差すると同時に、戦後復興のためのODAや国連平和維持活動参加問題という新たな問題にも直面した興味深い事例である。今回、外務省外交文書をカンボジアPKO国連事務総長特別代表の日記や関係国の外交官の回顧録と重ね合わせて読み込むことで、P5中心に意思決定が行われていく冷戦後安保理での多国間外交の実相も浮かび上がってきた。また、そこでP5審議への参加を繰り返し求めては拒否されていた日本が、ついにP3(米英仏)間の対立の間隙を縫うようにして安保理決議の起草を担っていたことも明らかとなった。その反面、P3との協議に参画できない他の非常任理事国から日本に対する不満が表明されていたことなども確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では令和5年度は国内外での資料収集と並行し、冷戦前期の国連安保理における日本外交を論稿にまとめる予定であった。だが、コロナ禍によって外交史料館での史料閲覧に未だ制約があり、海外渡航も困難であったために必要とする資料が足りず、目標とした論稿の執筆には至らなかった。ただし、先行して進めた冷戦後のカンボジア和平をめぐる非常任理事国外交の分析作業を通じて、本研究全体についての新たな視点や必要な資料についての重要な知見を得ることができた。そのため総合的に判断して「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画からすると本研究の進捗にはコロナ禍の影響でやや遅れが見られるものの、2023年度は海外での史料調査も再開の目途が立ち、5月初旬からは外交史料館での史料閲覧についての予約制度が撤廃され、国内での調査もスムーズに進められるようになった。そこで今年度は国連安保理における日本の投票行動等のデータ分析を急ぎつつ、加えて国内外での史料調査を進め、カンボジア和平をめぐる国連外交を論文として発表し、冷戦期初期の非常任理事国外交についての論稿をまとめたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により海外での資料調査が困難だったため、旅費等を使用しなかったことにより次年度使用額が生じた。今年度は海外での資料調査を再開する予定である。
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