2021 Fiscal Year Research-status Report
外交文書データの国際法・外交研究への利活用の拡充に向けて
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21K01382
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Research Institution | Eikei University of Hiroshima |
Principal Investigator |
長岡 さくら 叡啓大学, ソーシャルシステムデザイン学部, 准教授 (10550402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 智治 福岡工業大学, 社会環境学部, 教授 (50336046)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 外交文書 / AI技術 / データ分析 / 外交研究 / 国際法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人工知能(Artificial Intelligence、AI)技術を用いて外交文書データを国際法・外交研究に利活用するために行う研究である。また、本研究は、前置する研究課題(挑戦的研究(萌芽):17K18549)の研究成果に基づき、引き続いて行う研究である。 本研究では、前置する課題の研究成果を踏まえ、入手可能な外交文書を多数入手し、数値解析ソフトを用い、作業及び分析を行うことによって、AI技術を用いた、研究者がこれまでに人力で行ってきた資料の「探し出し、読みこなし、分析する」といった一連の作業の一部を代替させるための手法について、より具体的な提案を試みる。 研究初年次たる令和3(2021)年度は、研究体制の構築及び文字認識アルゴリズムの構築に取り組んだ。AI技術の内実としては高度な数値計算が必要となるため、まず、そのための設備(並列計算処理を行うことができる高性能なGPU搭載ワークステーション)を早急に購入し、研究体制の構築を行った。研究体制の構築後、文字認識アルゴリズムの構築について検討を行った。この点、これまでの検討結果から、文字データとして提供されていない外交史料は、文書の形式、文字の配列、文字の態様、言語の種類、その他綴り込まれている史料の多様性等の問題から、一括した文字認識アルゴリズムの構築には様々な調整を要することが判明している。このため、本年度は、比較的、文書の形式、文字の態様、言語の種類が類似している欧文諸言語による外交史料等の画像データからの文字認識アルゴリズムの構築に取り組んだ。 一方、紙媒体文書の画像認識・文字データ化やデータ化された文書の整理・加工・分析等の作業に伴い、当該データ類の著作権の取扱いについての懸念点があることに気がついた。令和3年度は、当該問題についても、本研究との関連において法的観点から整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、外交文書データを用いた国際法及び外交研究において当該研究を補完するAI技術利用あるいは今後の開発に向けた提案を行うことを目標としている。その際、AI技術に期待する能力は、研究者がこれまでに行ってきた、外交文書やこれに類似するデータ(史料)を用いての研究活動の一部(あるいは全部)について、AI技術が補助補完(あるいは代替)する能力を備えることにある。そのためには、これまで研究者が検討を重ねてきた外交史料等を用い、現存するAI技術での到達度や限界を明らかにすることが最も適していると考える。 研究初年次たる令和3(2021)年度は、研究代表者の年度途中の所属機関異動や新型コロナウィルス感染症の蔓延による研究への影響が懸念された。とりわけ、新所属機関における担当講義が一つのクォーターに急遽集中したこと、及び、新型コロナウィルス感染症の蔓延により外交史料の原本を所蔵する諸機関への訪問及び史料収集が困難になったことに伴い研究への影響が生じた。この点、新所属機関での担当講義が一つのクォーターに集中したことによって当該クォーターにおいて研究時間の減少を避けることはできなかったが、当初の予定より研究全体を効率的に進めるよう工夫したことで研究への進捗に多大な影響を及ぼさずにすんだ。又、新型コロナウィルス感染症の影響による諸機関の訪問や史料収集が困難になった点については、既に公開されている19世紀以前の外交史料等を用いることで代替することとし、影響を最小限に留めた。 これらの点から、本研究課題の現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまで研究代表者及び研究分担者が収集し検討を重ねてきた外交史料等を用い、①文字認識アルゴリズムの構築(前提条件の整理)、②文字認識アルゴリズムとデータマイニングアルゴリズム連結の調整、③AI技術での補助・補完可能性の総括、の三段階に分けて検討を行うこととしている。 研究初年次たる令和3(2021)年度は、研究体制の構築及び上述の第一段階(文字認識アルゴリズムの構築(前提条件の整理))について検討を行い、おおむね順調に進展することができた。 研究二年次たる令和4(2022)年度は、上述の第一段階の検討をさらに進めるとともに総括を行う。とりわけ、令和3年度は欧文史料を中心に検討したため、我が国の外交史料を扱う上で不可避である、多様な外交史料等の文字認識アルゴリズムの構築にも取り組む予定である。又、これらを踏まえ、第二段階(文字認識アルゴリズムとデータマイニングアルゴリズム連結の調整)についての検討を行う予定である。 研究最終年次たる令和5(2023)年度は、上述の第二段階の総括を行うとともに、本研究の総まとめとして第三段階(AI技術での補助・補完可能性の総括)についての検討を行い、総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度は新型コロナウィルス感染症の蔓延により、資料収集を予定した諸機関への訪問が叶わなかったことに伴う次年度使用額が生じた。令和4年度は、当初予定していた資料収集や関係者による研究会の実施に加え、上述の諸機関への訪問・資料収集を可能な限り実施し、当初の研究計画を遂行する予定である。
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Remarks |
長岡さくら、「人工知能(AI)を巡る国際法上の論点--国際法上の著作権・序論--」福岡工業大学総合研究機構環境科学研究所第16回環境研究発表会(2022年) 中川智治、「法学分野へのAI技術利用の研究動向について」福岡工業大学総合研究機構環境科学研究所第16回環境研究発表会(2022年)
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