2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01384
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大瀬戸 真次 東北大学, 経済学研究科, 教授 (00278475)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | メカニズム / 耐戦略性 / パレート効率性 / 非羨望性 / 初期保有 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、各経済主体が1種類の私的財を一定量初期保有しており、またその私的財に対して単峰性選好を持つ場合に、その私的財を再配分するための望ましいメカニズムの設計について研究を行った。望ましいメカニズムの条件として、(1)耐戦略性、(2)パレート効率性、(3)「初期保有の比率に関する非羨望性」の3つの公理を要求した。耐戦略性とは、各経済主体が自分の選好を正しく表明することが弱い意味での支配戦略となることをいう。パレート効率性とは、ある経済主体の状態を良くするためには、他の経済主体の状態を悪くしなければならないという意味で、私的財が無駄なく配分されていることをいう。「初期保有の比率に関する非羨望性」とは、従来の非羨望性を修正して、各経済主体の初期保有の比率を考慮するように定義した新しい非羨望性の概念である。 本年度の研究では、Sprumont (1991, Econometrica) の「均一配分メカニズム」を変形した「比率に関する均一配分メカニズム」という新しいメカニズムを提案した。第一の結果として、比率に関する均一配分メカニズムは、耐戦略性、パレート効率性、初期保有の比率に関する非羨望性の3つの公理を満たす唯一のメカニズムであることを証明した。第二の結果として、比率に関する均一配分メカニズムは、交代単調性(ある経済主体の選好が変化したとき、この経済主体の配分の増減と他の経済主体の配分の増減は反対方向に変化する)という公理を満たすことを証明した。第三の結果として、比率に関する均一配分メカニズムは、個人合理性(各経済主体の配分は初期保有よりも悪くはならない)という公理を満たすことを証明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、「比率に関する均一配分メカニズム」という新しいメカニズムを提案して、以下の3つの結果を証明できたため。 (1)比率に関する均一配分メカニズムは、耐戦略性、パレート効率性、「初期保有の比率に関する非羨望性」の3つの公理を満たす唯一のメカニズムである。 (2)比率に関する均一配分メカニズムは、交代単調性という公理を満たす。 (3)比率に関する均一配分メカニズムは、個人合理性という公理を満たす。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、各経済主体が1種類の分割可能な私的財を一定量初期保有しており、またその私的財に対して単峰性選好を持つ場合に、その私的財を再配分するための望ましいメカニズムの設計について研究を行った。今後は、私的財が分割不可能な場合について研究を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、令和5年度分請求額とあわせ、令和5年度の研究遂行に使用する予定である。
|