2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01384
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大瀬戸 真次 東北大学, 経済学研究科, 教授 (00278475)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メカニズム / 非分割財 / 耐戦略性 / 匿名性 / 予算均衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、経済主体間で金銭移転が可能な場合に、複数の同質的な非分割財を配分するための望ましいメカニズムの設計について研究を行った。望ましいメカニズムの条件として、(1)耐戦略性、(2)匿名性、(3)予算均衡、の3つの公理を要求した。耐戦略性とは、各主体が自分の選好を正しく表明することが弱い意味の支配戦略となることをいう。匿名性とは、二人の主体の選好が交換された場合には、メカニズムを通じて得られる配分も交換されることをいう。予算均衡とは、各主体が受け渡しした金銭移転の合計額は過不足なくゼロになることをいう。 Kato, Ohseto, and Tamura (2015, International Journal of Game Theory)は、非分割財の数が1つの場合において、各主体の選好集合が共通なn+1個(n:主体の数)の選好を含むならば、耐戦略性、対称性、予算制約の3つの公理を満たすメカニズムを設計できないことを証明した。対称性とは、二人の主体の選好が同一であるとき、メカニズムを通じて得られる配分が与える効用が等しいことをいう。対称性は匿名性よりも弱い公理である。 本年度の研究では、非分割財の数が複数の場合において、各主体の選好集合が共通な二つの選好を含むならば、耐戦略性、匿名性、予算制約の3つの公理を満たすメカニズムを設計できないことを証明した。この結果は、先行研究と比較すると、(1)対称性よりも強い匿名性の公理を利用しているという短所があるが、(2)非分割財の数が複数の場合に適用できる、(3)選好集合がより小さい場合にも適用できる、という長所がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、非分割財の数が複数の場合において、各主体の選好集合が共通な二つの選好を含むならば、耐戦略性、匿名性、予算制約の3つの公理を満たすメカニズムを設計できないことを証明することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、非分割財の数が複数の場合において、各主体の選好集合が共通な二つの選好を含むならば、耐戦略性、匿名性、予算制約の3つの公理を満たすメカニズムを設計できないことを証明した。今後の研究では、匿名性を対称性の公理で置き換え、非分割財の数が複数である場合において、耐戦略性、対称性、予算制約の3つの公理を満たすメカニズムを設計することが可能か否か議論していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度までの研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、令和6年度分請求額とあわせ、令和6年度の研究遂行に使用する予定である。
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