2023 Fiscal Year Research-status Report
Wealth inequality and optimal taxation
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21K01385
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中嶋 智之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50362405)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 最適課税問題 / 私的情報 / プリンシパル・エージェント問題 / 連続時間最適化問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度も前年度に引き続き、政府の最適(マクロ)経済政策について研究を行った。特に、情報の非対称性やコミットメントの問題などにより、資産市場が不完全であったり非完備であったりする場合に望まれる経済政策に関する分析を進めた。特に、ここ数年継続している研究が、そのようなマクロ経済政策分析に理論的基礎を与えるダイナミックなプリンシパル・エージェント問題である。ダイナミックなプリンシパル・エージェントに関する既存の研究では、(プリンシパルにモニターされない形で)エージェントが資産蓄積を行うことを許容しないことが通例である。その理由のうち大きなものが、いわゆる、first-order approachの適用可能性の問題である。First-order approachとは、プリンシパルの最適化問題の制約条件であるエージェントの誘引両立条件をエージェントの効用最大化問題の1階の条件で置き換えるapproachである。多くの場合、プリンシパル・エージェント問題を理論的・数量的に分析するうえで、first-order approachの適用がcrucialなステップになる。それにもかかわらず、ダイナミックなプリンシパル・エージェントモデルにおいて、エージェントの資産蓄積を許した場合のfirst-order approachの適用可能性は、未だ十分に明らかになってはいない。当該年度も、この点について検討を進めてきた。特に、Sannikov (2008)、Di Tella and Sannikov (2021)、Kocherlakota (2004)などのプリンシパル・エージェント問題においてfirst-order approachの適用可能性について分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貸し手側のコミットメントの限界により、借り手と貸し手の関係に非効率性が生じる可能性について、特に借り手が政府であるケースについて理論的に分析したものがJournal of Money, Credit, and Bankingに掲載された(Kobayashi, Nakajima and Takahashi, 2023, “Debt Overhang and Lack of Lender’s Commitment”)。Sannikov (2008)、Di Tella and Sannikov (2021)のモデルを拡張し、ダイナミックなプリンシパル・エージェント問題において、エージェントに資産蓄積を許した場合にfirst-order approachが適用できることを議論した論文” Principal-Agent Problems with Hidden Savings in Continuous Time: Validity of the First-Order Approach”に関して、より一般的な仮定のもとに結果を拡張する作業を行った。Kocherlakota (2004)で分析された最適失業保険のモデルにおいても、類似した手法を用いてfirst-order approachが適用できる可能性について分析を行った。これらの結果を得るために、確率微分方程式(特にforward-backward stochastic differential equations)や偏微分方程式(特にviscosity solution)の理論の適用についても検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、これまでの研究に基づき、私的情報などにより資産市場に不完全性・非完備性がある状況における望ましい経済政策に関する理論的分析と、idiosyncratic riskのあるマクロ経済モデルを用いたより数量的な分析を勧めていく予定である。
例えば、以下のようなテーマを考えている: (1)貯蓄がモニター可能でない場合の保険提供の理論を最適な失業保険の提供の問題に応用すること、(2)民間による 保険提供がある経済において、社会保障に関して政府が果たすべき役割についての理論研究、(3)人的資本など政府によってモニター可能でないような資産蓄積 が可能な経済での最適な所得再分配政策、(4) 動学的なメカニズムデザイン問題の連続時間の最適制御問題のフレームワークにより分析すること、(5)労働者の moral hazardの問題がともなったlabor search modelでの最適なマクロ経済政策など。
更に、より数学的な研究課題としては、dynamic programmingにおけるHamilton-Jacobi-Bellman方程式のviscosity solutionやstochastic maximum principleにおけるforward-backward stochastic differential equationsの最近の理論的結果を、経済問題へ応用することも検討していきたい。
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Causes of Carryover |
出席を予定していた学会がオンライン開催となったためなどにより、次年度使用額が生じた。2024年度に海外出張として使用する予定である。
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