2021 Fiscal Year Research-status Report
行動学的割引因子モデルを用いたナッシュ・リバージョン戦略の堅牢性に関する研究
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21K01387
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
若井 克俊 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80455708)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経済理論 / ゲーム理論 / 意志決定論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カルテル等の分析に用いられる無限期間繰り返しゲームにおける「ナッシュ・リバージョン戦略」に関し、その堅牢性(Robustness)を、近年研究が進む「行動学的割引因子モデル」を用いて分析することを目的とする。
令和3年度は、「割引効用モデル」に代えて用いる「性質の異なる2つの割引因子を持つモデル」において、それぞれの割引因子と「最強の抑止力を持つ『最適罰則』」との関連性を一般化することを試みるとともに、対称な均衡戦略を仮定し、「ナッシュ・リバージョン戦略」の堅牢性を分析した。具体的には、本研究にて採用する行動学的な割引因子モデルにおいては、将来の利得効用の平均値と現在の利得効用との差を求め、その差が「正(Gain)」のときは大きく割り引き、「負(Loss)」のときは少なく割り引く形式(Gain/loss Asymmetry)を用いている。これを踏まえ、「抑止力・信頼性」という罰則の2つの役割と「Gain・Loss」を評価する2つ割引因子との一般的な関係性を導出することを検討した。その際、カルテルの分析だけでなく、より一般的な繰り返しゲームにおけるナッシュ・リバージョン戦略を検討する必要があるので、まずは「対称な均衡戦略」を仮定し、ナッシュ・リバージョン戦略の堅牢性を同時に分析した。
分析の結果、ステージゲームにおける戦略の代替性等に関し一定の仮定を課すことで、ナッシュ・リバージョン戦略の堅牢性を示すことが出来る可能性が高いことが分かった。一方で、新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、オンライン講義等の対応に追われ、かつ、大学本部理事補としての職務も加わった結果、研究時間の確保が困難になり、「抑止力・信頼性」という罰則の性質と「Gain・Loss」を評価する割引因子との一般的な関係性の導出については研究が進まず、本年度の成果は投稿段階まで至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)「対称な均衡戦略」に関しては、「行動学的割引因子モデル」を用いた「無限期間繰り返しゲームにおける『ナッシュ・リバージョン戦略』の堅牢性(Robustness)の分析」が予定通り進んでいる。
(2)2020年10月より大学本部の理事補を務めていること、2021年度も引き続き新型コロナウィルス感染症拡大に対応を求められたことなど、組織運営業務やオンライン講義の準備にかなりの時間を費やさざるを得ず、予定していた研究の多くの部分を行うことが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)令和3年度の結果を踏まえ、「対称な均衡戦略」に焦点を当て、「抑止力・信頼性」という罰則の2つの役割と「Gain・Loss」を評価する2つ割引因子との一般的な関係性を導出することを目指す。
(2)「対称な均衡戦略」に焦点を当て、ステージゲームにおける戦略の性質とナッシュ・リバージョン戦略の堅牢性との関係を明らかにすることを目指す。
(3)「非対称な均衡戦略」に関して、上記(1)、(2)と類似する課題の検討を開始する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由: 年度当初からの新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、予定していた国内・海外出張の実施が困難になった。また、新型コロナウィルス感染症拡大に伴うオンライン講義の準備や大学本部理事補としての組織運営業務等に多大な時間を費やした。このため、本研究課題については理論的な初期研究にとどめ、関連する海外出張等は令和4年度以降に集中的に行うこととした。また、令和3年度に予定していた高性能ワークステーションコンピューターの購入も令和4年度以降に延期した。
使用計画: 研究打ち合わせ・学会参加・研究成果発表等のための国内・海外出張、参考図書・資料の購入、コンピューターの購入、ならびに、論文の英文校正等に使用する予定である。
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