2022 Fiscal Year Research-status Report
The Lender of Last Resort in a Monetary Economy
Project/Area Number |
21K01389
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松岡 多利思 東京都立大学, 経営学研究科, 准教授 (70632850)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 貨幣均衡 / 最後の貸手 / 流動性危機 / モラルハザード |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「A Monetary Equilibrium with the Lender of Last Resort」(京都大学の渡辺教授との共同研究)の改訂を行った。理論モデルを大幅に組み直し、分析の精緻化を行い、さらに政策的に重要な結論を得た。主な政策インプリケーションは以下の5つである。
1:最後の貸手機能の存在は、銀行の準備を減少させ、流動性危機の確率を高めるが、その被害を抑制することが可能となる。2:古典的な最後の貸手機能であるバジョット・ルールは、銀行のモラルハザードを引き起こさず、むしろ低金利融資が望ましい。3:銀行のモラルハザードは、中央銀行の拡張的な最後の貸手政策の存在、情報の非対称性、リスク資産の生産性によって引き起こされる。4:最後の貸手による貸出金利およびヘアカット率の操作はモラルハザードを抑制する上で有効である。5:拡張的最後の貸手政策は、経済厚生の観点から有効である。
これらの結果は、既存研究では部分的にしか報告されておらず、これらの新旧の結果を報告した研究は存在していない。特に、モラルハザードの引き起こされるメカニズムを貨幣均衡で示した研究は存在せず、重要な政策的インプリケーションが得られている。来年度以降、結果を論文としてまとめ、ワーキングペーパーとして公開し、査読付国際雑誌に投稿することを予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論モデルの構築および重要な理論結果は既に得ているため。今後はこれまで得られた結果を論文としてまとめ、ワーキングペーパーとして公開する。さらに査読付国際雑誌に投稿することを予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度以降、これまで得られた結果を論文としてまとめ、ワーキングペーパーとして公開する。さらに査読付国際雑誌に投稿することを予定している。
また、先進各国が導入を検討している中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)の研究を開始する。具体的には、CBDCの導入が銀行危機を誘発するか否か、を貨幣サーチ理論の枠組で分析する予定である。基本となる理論モデルは既に開発済みであるため、順調な進展が見込まれる。
|
Causes of Carryover |
研究会や学会が引き続きオンラインが継続されているため。
|