2022 Fiscal Year Research-status Report
最適な協調公債発行制度の設計―公債発行上限の逸脱可能性も考慮した政治経済分析―
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21K01395
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
荒渡 良 同志社大学, 経済学部, 准教授 (20547335)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 財政ルール / 逸脱ルール |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の1年目であった令和3年度には,有権者が現在バイアス(負担を先送りする誘因)を持つために過大な財政赤字・国債発行が生じるような状況を考えた上で,政府に「ルールを無視する」という選択肢がある場合の国債発行ルールについて理論的な分析を行なった.しかし,これらのモデルでは外生的に与えられた費用さえ支払えばいつでも自由に財政ルールを無視できるという仮定が置かれており,「財政ルールの逸脱条件」は全く考慮されていなかった.現実の世界では予め定められた財政ルールを逸脱するためには政治的な手続きが必要であり,その手続きも含めた広範な意味での財政ルールを考えることには重要な研究的な意義がある. そこで研究期間の2年目である令和4年度には財政ルールを「支出ルール」と「逸脱ルール」の2つに分けた理論モデルを構築し,その上で最適な支出・逸脱ルールの特徴を調べた.モデルの概要は以下の通りである.2つの政党が存在し,それぞれが獲得する議席数が確率的に決まるような政権交代モデルを考える.各政党の支持者は財政支出に関する選好が異なっており,政権政党は過剰な財政支出と公債発行を行う誘因を持つ.財政支出には「支出ルール」によって上限が設けられているが,「逸脱ルール」によって定められた議席数を上回る議席を獲得した政権政党は支出ルールを無視することができる. 上記のような設定のモデルを構築した上で政治経済均衡を導出し,社会厚生を最大化するような「支出ルール」と「逸脱ルール」の特徴について調べた.分析はまだ完全には完了していないが,両ルールは(1)初期の公債残高と(2)各政党の支持者間の対立の強さ(財政支出に関する選好の違いの大きさ)と密接な関係を持つことが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた理論モデルの分析が順調に進んでいるため.しかし,分析結果を論文の形にまとめる段階までは進んでおらず,当初の計画以上に進展しているとは言えない.
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Strategy for Future Research Activity |
財政ルールに関する理論分析は政治経済学の分野で一定の蓄積があるが,「支出ルール」と「逸脱ルール」を分けて分析した例は少ない.そのため,分野内で「標準的」とされる分析方法が確立されておらず,モデル設定の変更が結果にどのような影響を及ぼすのかについては慎重に検討する必要がある.令和4年度にはモデル構築と基本的な分析が完了したため,今後は結果の頑強性に注意を払いながら分析を進める予定である.
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Causes of Carryover |
文具等の消耗品の使用を当初の想定よりも節約できたため,わずかに予算が余った.次年度に文具等の消耗品購入に充てる予定である.
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Research Products
(1 results)