2023 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the Intellectual Network of East India College and the Relationship between Malthus and India
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21K01414
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
荒井 智行 南山大学, 経済学部, 教授 (70634103)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 東インド会社 / 東インド・カレッジ / 植民地支配 / マルサス / 経済学の制度化 / インド / インド統治 / 国際貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
「現在までの進捗状況」の中で記した通り、2023年度では、東インド会社の役員、Charles Grant に関わる諸文献や東インド会社のOffice Recordを読み込みながら、本研究の基礎を固めていく作業を行った。また、大英図書館のIndia Office Recordにおいて、東インド・カレッジについての貴重資料も収集した。それらに関連する入手可能な文献も集め続けながら、資料分析を地道に行い続けた。 2023年5月に、本科研費の直接のテーマと関わらないわけではないが、共著書(『愉楽の経済学――マルサスの思想的水脈を辿って』 柳田芳伸編 (担当:共著, 範囲:第3章:「「悪習」と「困窮」に対する「動機づけ」の政策思想 ――D.スチュアートにおける「愉楽の標準」に焦点を当てて」(pp.75-101))を刊行した。なお、本論文を示すために、その前年度の7月に、日本大学(同時ハイブリッド)で開催された「愉楽と経済学者たち」の研究会において、「デュガルド・スチュアートにおける「愉楽の標準」」について研究報告を行った。その研究会において、研究会の参加者の中から有益な意見を賜った。(そのほかに、論文「デュガルド・スチュアートにおける「国富」とは何かをめぐって――『政治経済学講義』第2編第1章「ノートからの転載」を中心に」、『南山経済研究』37(3)、pp.225-244、2023年3月.を発行した)。 2024年度では、本科研費の直接的なテーマである東インド・カレッジとマルサスの経済思想研究についてさらに発展させ、海外への発信に向けた学術的な成果を示すことができるよう努めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、2021、2022年度に、大英図書館において、本研究に関わる一次文献の資料を収集する予定であったが、コロナ問題により、その資料調査を行うことができなかった。また、交付申請書に記した他大学の図書館に所蔵されているデータベースや文献・資料類についても、コロナ問題により学外者の入館が禁止されていたため、それらの資料の閲覧すらできなかった。これらの状況は、交付申請書の中でも記した通り、想定はしていたが、通年にわたってコロナ問題が続いたことは、資料収集の面で後れを取ったと言わざるをえない。 だが、2023年度になってようやくコロナが終息していき、それまで国内で入手可能な文献や資料を読み解きながら研究を発展的に進めることができた。東インド会社が設立した東インド・カレッジに関する各種の記録集を読み進める中で、東インド会社の役員であったチャールズ・グラントの思想の重要性等、これまでにはない新たな知見を得ることができたことは大きな収穫であった。これは、マルサスの経済思想のみのアプローチとは異なる別の角度からの本研究のテーマについて検討する試みでもあり、当初の研究計画書の予定通りに研究を進展させているものと判断している。その点で、次年度(2024年度)においても、東インド・カレッジと関わらせながら、18世紀後半以降のイギリス経済思想史研究について継続的に研究成果を示したい。 2021および2022年度において、コロナ問題による資料の収集が十分に進めなかったとはいえ、2023年度に、資料収集・資料分析において、それまでの研究の若干の遅れをある程度巻き返すことができたと考える。以上の観点から今後も入手可能な文献や資料を読み込みながら、粘り強く研究を進めていく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進策として、まずは2024年度中に国際学会での報告を予定としたい。これは、2023年の5月以降からコロナ問題が解消したことに拠るものである。本学の学内的な規定において、それまでは、海外での国際学会での報告は感染症予防のため困難であった。2023年5月以降から国際学会での報告も認められるようになったが、その時には申請可能な国際学会の大会にエントリーすることができなかった。しかし、コロナ問題が解消された2024年度においては、自らの研究を海外に発信すべく、まずは国際学会で報告したいと考える。 もちろん国内での研究会や学会報告を行いながら、論文の改善に努めながら本研究をより発展させていくことも必要だと考える。その点は、状況を判断して決めていきたい。今後の本研究の推進策は、交付申請書で記した各研究者からの助言を賜りながら、チェックを重ねながら論文のレヴェルを高めていくことである。論文の完成度やその客観的な評価について、上述の研究者の意見を取り入れながらチェックを重ねていく予定である。なぜなら、自らの研究論文が国際的にいかなる評価と位置づけをもつかについて、批判点も含めて客観的に見なければならないからである。 今後は、上述の研究者の方々からの意見を賜りながら、交付申請書で記した東インド・カレッジの役員や委員に関わる文献を引き続き分析する。それらの文献を手がかりにしながら、彼らとマルサスとの関係性をさらに探っていく。今後は、一次資料の収集にかかわらず、これまでの国内・海外で入手した資料の分析も含めて、本研究の成果を示すということに力点を置きながら研究を進めたい。本研究は今年度で最終年度を迎える。本研究の期間内に成果を示すことができるよう、着実に論文作成に努める所存である。
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Causes of Carryover |
2021~2023年度の春頃までは,新型コロナ・ウィルス問題により、国内・国外での国際学会での報告ならびに国内・国外、とりわけIndia Office Recordを所蔵する大英図書館において東インド会社ならびに東インド・カレッジの資料収集を行うことができなかったにより、毎年度使用する費用について、絶えず修正を迫られることになったことである。この状況は、特に本研究を遂行するための計画変更を余儀なくされた。 強く指摘しておきたいことは、本年度、国際学会でのエントリーを予定していたが、コロナ問題が終息し始めたのは、2023年の春頃ということであり、それ以降に大会参加できる国際学会は限られていたことから、申請者の大会参加は実らなかったことである。2023年度では、本学の規程により、2023年6月頃までは、海外出張も認められなかったことから、致し方なかった。ZOOMで参加できる国際学会もあったが、申請者の研究テーマに近い海外の研究者との知的交流を行いたいと考えていたため、かねてから対面での参加を希望していた。 しかし、申請者は、2024年度中に国際学会での大会報告を予定しており、そこでの報告のための費用を充てたいと考える。そして報告だけでなく国際的な学術論文の投稿に結びつけることを希望している。
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