2021 Fiscal Year Research-status Report
Efficiency bound for moment restriction models with time series observations
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21K01427
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
末石 直也 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (40596251)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 局所漸近正規性 / 効率性限界 / 時系列モデル / 特定化検定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、モーメント制約によって定式化される統計モデル(モーメント制約モデル) の効率性限界の導出を目指す。一般に、統計モデルに含まれる有限次元パラメータの推定に おいては、いかなる正則な推定量を用いても下回ることのできない漸近分散の下限が存在し、その下限は効率性限界と呼ばれる。独立で同一の分布に従う(i.i.d.)データの場合には、モーメント制約モデルの効率性限界は既知であるが、時系列データの場合の効率性限界は未知であり、計量経済学の理論研究における未解決問題として残されている。本研究では、時系列モーメント制約モデルの効率性限界を導出する。 効率性限界を導出するためには、モデルの局所漸近正規性(LAN: local asymptotic normality)と呼ばれる性質を示すことが鍵となる。本年度は、時系列モーメント制約モデルのLAN性を示す前段階として、i.i.d.のケースでモーメント制約モデルと条件付きモーメント制約モデルのLAN性を示す方法について考察した。 また、派生研究として、モーメント制約によって定式化されるモデルの特定化検定と、モデルに含まれるパラメータの漸近的に効率的な推定量の関係性について考察した。局所的な定式化の誤りの下での検定統計量と推定量の漸近的な性質を調べた結果、検定統計量を用いて検出できる分布のずれの方向と漸近的に効率的な推定量にバイアスをもたらすような分布のずれの方向が直交することが示された。これは特定化検定を用いても、推定量にバイアスが生じるかどうかを判断するのは不可能であることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
派生研究として特定化検定に用いる検定統計量の性質について調べていたため、メインの研究の進捗が予定より少し遅れたが、おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度取り組んだ特定化検定と漸近効率的な推定の関係については、これ自身も重要な研究であるため、今年度も継続して行う。一方、メインの研究課題については、最初から一般の時系列のケースでモデルのLAN性を示すのは困難であるので、まずは比較的時系列構造が単純なモデルについて、LAN性を示す方法を考察する。今年度中にそれが可能であれば、さらに結果を拡張して、エルゴード性や定常性などの最低限の条件の下でLAN性を示す方法を考察する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で旅費を使う機会が限られたため次年度使用額が生じた。今年度は出張機会が増えると考えられるため、旅費に充てる。
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