2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical analysis of firm and network dynamics by using machine learning techniques
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21K01438
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
宮川 大介 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (00734667)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 企業ダイナミクス / 取引関係 / 機械学習 / 因果推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
補助事業期間の初年度(令和三年度)は以下の三点に関する研究を実施した。第一に、人流データを用いて計測した製造業に属する企業の工場稼働状況をpredictorとして用いることで当該製造業企業の取引先における活動量を予測するモデル構築を行ったほか、取引クラスタ単位での不正検知を予測するモデルの構築に取り組んだ。なお、後者は特許出願済みである。第二に、取引レベルのアウトカム(取引シェア)の予測を行うための機械学習ベースのモデルを構築した。なお、この結果は、Arata & Miyakawa (2021)における分析の基礎的な情報として用いられているほか、既存技術に比した新規性の観点を踏まえた特許出願も現在検討されている。第三に、当該予測に用いた機械学習手法を計量経済学的手法を組み合わせた異質な処置効果の推定を行った。なお、この結果は、Arata & Miyakawa (2022)として取りまとめられている。第三の分析は当初計画では令和四年度に実施することを検討していたが、研究の進捗を踏まえて前倒しで実施したものである。 (参考文献) Arata, Y. and D. Miyakawa (2021) “An Empirical Analysis for the Micro Origin of Aggregate Fluctuations,” RIETI Discussion Paper Series 21-E-066. Arata, Y. and D. Miyakawa (2022) “Demand Shock Propagation through an Input-Output Network in Japan,” RIETI Discussion Paper Series 22-E-027.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、取引クラスタレベルの不正検知及び取引関係の強度に関する予測モデルの構築に成功している(Arata & Miyakawa 2021として取りまとめ済み)ほか、当初は令和四年度に実施する予定であった異質な処置効果の推定について研究を進め、その結果をArata & Miyakawa (2022)として取りまとめている点は、当初の予定を上回る進捗といえる。この成果は、機械学習手法を用いて、予測と因果推論を融合した実証分析を行うという本研究課題の目標に合致したものであり、研究が順調に進展していることを意味している。
一方で、当初予定していた業種等に関する企業ダイナミクス予測を行うサブモデルの構築については、現状では取り扱いを劣後としている。これは、研究プロジェクトの目標の一つである「機械学習ベースの予測モデルの結果を企業活動に投入した場合のインパクト計測」を実施する際のfeasibility studyを踏まえて、予測対象をよりシンプルな対象へ変更したためである。具体的には、上記の「企業活動量の予測結果」を企業の営業担当者や与信担当者へRCTの形式で提供することを念頭に置いた予測モデルの構築に取り組んでいる。当該予測モデルの構築については、predictorとして用いる人流データの正確性の問題などから予測精度の向上に時間を要しており、引き続き改善の必要性が認められる状況にあるものの、予測対象を含むデータの特性に関する理解は深まっており、引き続いての研究推敲に大きな問題はないものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和四年度は、拡張的な予測モデルの結果を用いたArata & Miyakawa (2021)と異質な処置効果の推定を内容としたArata & Miyakawa (2022)について、査読付き英文ジャーナルへの投稿を含めた一層のpublicizeへ注力すると共に、企業を対象とした高精度の予測結果をRCTの形式で企業実務へ投入した際の影響を計測するという、世界的にも例のない取り組みに当初計画通りチャレンジする。
勿論、こうしたRCTベースの因果推論の実施に当たっては、学術研究としての位置づけだけではなく、実務的な観点からみた合理性を基盤とする協力関係を構築することが必須であり、その実現に関しては一定の不確実性も認められる。ここで、本研究課題の目的が、予測と因果推論を融合した実証分析を行うという点にあることを踏まえた場合に、RCTを用いた「機械学習ベースの予測結果に係る経済価値の検討」の代替的な方策として、例えば、機械によるシステマティックな予測と人による裁量的な予測との間における予測精度の差異が、どのような要因によって引き起こされているかを検討することで、「機械学習ベースの予測結果に係る経済価値」を実証的に把握するという方向性も考えられる。研究代表者自身の過去の取り組みであるMiyakawa & Shintani (2020)の成果も踏まえながら、こうした研究テーマを深堀するという方向性も検討したい。
(参考文献) Miyakawa, D. and K. Shintani (2020), “Disagreement between Human and Machine Predictions”, IMES Discussion Paper Series 2020-E-11, Bank of Japan.
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Causes of Carryover |
年度内の執行計画に端数(1329円)が生じたため次年度使用に繰り越した。次年度において物品費として使用を予定している。
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