2021 Fiscal Year Research-status Report
Deep Regional Trade Agreements with Harmonization and Mutual Recognition of Product Standards
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21K01444
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
川端 康 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50308839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寳多 康弘 南山大学, 経済学部, 教授 (60327137)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域貿易協定 / 製品基準 / 関税 / 自由貿易協定 / 関税同盟 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,関税削減・撤廃による貿易自由化だけでなく,製品基準の調和・相互承認も含む深化した地域貿易協定(RTA)に関する理論的考察を行うものである。 2021年度において,研究代表者・分担者は,共著論文“Deep trade agreements and harmonization of standards”を海外査読誌Southern Economic Journalに掲載した(科研費を用いて論文をオープンアクセス化している)。この論文では,製品基準の調和を含む深化した自由貿易協定(FTA)と関税同盟(CU)について,(1)国際貿易・経済厚生に与える影響(静学的分析),(2)マルチ(多国間)の貿易自由化・基準の整合化に及ぼす効果(動学的分析)という観点から理論的に分析している。主な結果として,基準の調和を含む深化したFTAはマルチの貿易自由化・基準の調和を阻害するかもしれないが,深化したCUはそれらを阻害しない(ただし,国や企業の異質性を考慮に入れると,CUのケースでもマルチの貿易自由化・基準の調和は阻害される)ことを得ている。 また,研究代表者は,論文“Deep Free Trade Agreements with the Harmonization of Production Subsidies”を作成した。この論文では,生産補助金の調和を含む深化したFTAが,小国と大国(小国よりも大きな国内市場と多くの企業をもつ)の間で締結されるとき,各国の経済厚生にどのような影響を与えるかを明らかにしている。 これらの研究成果は,深化したRTAと従来の関税撤廃だけのRTAについての分析結果の比較,FTAとCUについての分析結果の比較を通じて,マルチの貿易自由化につながるRTAの指針を示す上で重要な貢献を果たしていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
製品基準の調和を含む深化した自由貿易協定(FTA)と関税同盟(CU)について,国や企業の異質性を考慮に入れ,(1)国際貿易・経済厚生に与える影響(静学的分析),(2)マルチ(多国間)の貿易自由化・基準の整合化に及ぼす効果(動学的分析)という観点から理論的に検討した論文を海外査読誌に掲載することができた。また,異なった国内政策の調和として生産補助金のケースにも焦点を当て,生産補助金の調和を含む深化したFTAについて分析した論文を作成することもできた。したがって,研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,(1)国や企業の異質性を考慮に入れた,製品基準の相互承認を含む深化した地域貿易協定(RTA),(2)グローバル・バリューチェーンを考慮に入れた,製品基準の整合化を含む深化したRTA,(3)国内制度(製品基準以外で,環境規制など)の調和を含む深化したRTA,というテーマに取り組む。各テーマにおいて,文献調査・実態調査に基づき,理論モデルを構築し,分析を行う。分析結果について,研究代表者・分担者間でディスカッションを行い,学術論文の形にまとめる。また,「深化した地域貿易協定に関する研究会」を開催し,研究の方向性・発展性について多面的に検討する。研究成果は,国内外の学会・研究会で報告し,国内外の査読付き学術誌へ投稿し,掲載を通じて広く発信する。
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Causes of Carryover |
所属研究機関において,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に伴い,教員の海外渡航が原則禁止となっていたので,調査研究のための外国旅費を使用できなかった。 次年度には,調査研究・研究成果発表のために外国旅費として使用する予定である。
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