2023 Fiscal Year Research-status Report
Macroeconomic Analyses on Corporate Income Tax Competition
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21K01450
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
盛本 圭一 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (50609815)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 法人税 / 租税競争 / 経済成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は、法人税租税競争の厚生評価を行うベースラインの研究論文が査読誌に条件付き採択まで到達したことである。この論文の具体的内容は次の通りである。 企業が自由に立地選択をおこなう国際経済モデルを構築し、企業の集積と経済成長を念頭に置く法人税率の競争を国家間でおこなう理論モデルを構築した。ベンチマークとなる、全世界的に最適な法人税率を計算し、そのうえで競争によって実際に到達する税率を計算して、両者を比較した。その結果、国家間で知識の伝播が起こる程度に依存して、競争時の法人税率が過大になったり過小になったりすることが分かった。すわなち、知識の伝播が法人税租税競争の定性的結果を評価するうえで重要であることが分かった。 さらに、このモデルを現実の先進諸国のデータにフィットするようキャリブレーションを実施した。そして、法人税租税競争がもたらす厚生損失の大きさを測った。計測の仕方は、競争によって失われた社会厚生が、全世界的に最適な配分が達成されている場合との比較して何%分の消費減少と等価になるかを計算するというものである。その結果、ベンチマークとなるパラメータ値では0.14%程度の消費減少という評価を得た。これは、法人税の租税競争がもたらす厚生損失は、あまり大きくないということである。その理由は次の通りである。企業は生産性と税負担のバランスが良い立地選択をするが、それは社会的にも民間部門の租税負担と経済成長のバランスが最適である状況と同じであるため、長期的な経済成長は租税競争によって阻害されない。したがって、長期的には経済成長率が社会厚生の最も重要な要素であることから、法人税租税競争の長期的な損失はあまり大きくならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度終了時点で、法人税租税競争のベースラインモデルが条件付き採択されており、概ね計画通りに成果が出ている。さらに、ベースラインモデルを用いた再分配分析の論文も原稿が上がりつつあるため、概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度末で査読誌に条件付き採択になっている論文を正式に出版することが最初の課題となる。また、租税競争の再分配効果を測る研究が草稿完成間近であるため、それを公表して国内外の学会・セミナーで報告し改善する。また、 その結果を踏まえて、社会的に最適な状況に競争下で可能な限り近づける誘導問題に着手する。
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Causes of Carryover |
本年度末時点で査読誌に条件付き採択となっている論文の出版関連費は、本年度の予算で執行する予定を立てていたが、次年度の執行予定に変更となった。また、国際学会への参加予定が1年延期になったことから、本年度の予算を次年度に繰り越す必要が生じた。
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