2022 Fiscal Year Research-status Report
The Impacts of Offshore Production on the Labor Market
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21K01451
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
横田 一彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40390819)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海外委託 / 労働市場 / 雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究では、日本、韓国、中国、米国の製造業とサービス業の産業別雇用データ(社会経済計算:SEA)を国際産業連関表(WIOT)にまとめることで、製造業の海外生産委託が生産者サービスの労働市場に与える影響を実証的に検討した。この研究の新規性は2つある。第一に、産業連関表を用いることで、製造業の中間財に関する先行研究では測定できなかった、海外生産委託によって海外で創出されたスピルオーバー付加価値の算出や、複数国にまたがる海外生産委託の影響を把握することが可能になったこと。第二に、これまでの製造業中心の分析とは異なり、財の生産に具現化される生産者サービスに十分な注意を払うことで、製造業の海外生産委託が物流、コンサルティング、金融、デザイン、マーケティング、研究開発部門などの生産者サービスの雇用に与える影響を検証することができることである。 暫定的な結果は、製造業の海外生産委託が雇用に与える影響を検証するために利用できる。先進国においてサービス業の割合が増加していることを考えると、海外生産委託が国内労働市場全体に与える影響は、製造業にのみ焦点を当てた先行研究よりも大きくなる可能性がある。したがって、本稿のこの分野への貢献は、第2世代の海外生産委託統計(Feenstra 2017)を用いて、生産者サービスの重要性を考慮した海外生産委託の労働市場への影響を検証した。 この論文は2022年8月にマレーシアのクアラルンプールで開催されたEast Asian Economic Association(EAEA)で“The Impact of Offshoring on Employment in Producer Service Sectors: Comparative study of Japan, Korea, China, and the U.S.”のタイトルで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年8月EAEAで発表した論文では海外生産委託の規模を推測するために、サービス貿易の競争力を日本、中国、アメリカで計測した。ある特定のサービスは財の生産に付随するため、その貿易構造を把握すれば、海外生産の直接ではなくても間接的な規模を類推することができる。第1稿では日本、韓国、アメリカの製造業とサービス産業の産業別賃金と雇用者数のデータ(UNIDO)を国際産業連関表(WIOD)に結合し、海外生産委託が労働市場に与える影響を実証的に検証した。これまでの製造業中心の分析とは異なり、近年重要性を増しているサービス貿易に十分な注意を払うことで、財に体化されたTaskのOffshoringを分析対象に含めることができるという利点がある。輸入された中間財に体化されたサービス、例えば物流コストやパテントのロイヤルティやR&Dに含まれる付加価値の雇用やその賃金に与える影響を調べることができると期待される。 また、海外生産が行われるか否かは自国と相手国の非経済的状況に左右される。そこでその非経済的要因の一つとして汚職を取り上げ、11年間(2005年~2015年)の64カ国のデータを用いて、国別の公共部門の汚職の程度がグローバル・バリュー・チェーン(GVC)を阻害するかどうかを検証した。その結果、ある国の産業別輸出品に占める海外からの中間投入物の割合を示す後方連関指数は、その国や相手国の汚職の程度が高いほど低くなることがわかった。また、産業別の輸出に占める自国の中間投入物の割合を示す前方連関指数は、相手国の腐敗度が高いほど低くなることが明らかになった。GVC参加率が高い国ほど経済成長率が高いことを考えると、汚職を減らす努力は経済成長にプラスに働くと言える。この論文は2023年3月の北京大学と早稲田大学の共同ワークショップで発表し、現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年10月に韓国ソウルで開催されるEAEA第18回国際大会で次の論文を発表する予定である。The Impact of Economic Sanction on International Trade and Global Supply Chain: Evidence from Bilateral Global Sanction Data.” この論文では1990年から2016年までの世界の経済制裁の国際貿易とGVCへの影響を調べる。とくに本研究では2国間の経済制裁が制裁された国の輸出と輸入、GVCのLinkageに与える影響を2国間のデータを用いて検証する。経済制裁データのGlobal Sanctions Data Base (GSDB) (Gabriel Felbermayr et al., 2020)は、武器貿易、軍事支援制裁、貿易制裁、金融制裁、旅行への規制等の情報を提供している。 近年、反民主的な国や人権侵害を行う国に対する制裁が増加しているが、被制裁国の国際貿易やGVCに与える影響を明らかにした論文はまだ少ない。とくにGVCが制裁された国の貿易相手国を含めたグローバルな影響をサプライチェーンを通じて波及的に与えるために、その経済制裁の影響を明らかにすることは、今後の経済制裁の効果に関する議論をする上で重要である。
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Causes of Carryover |
予定していた国内・国際学会出張が新型コロナウィルスの影響で中止になったため。繰越金を今年度の学会発表費用に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)