2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01454
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
上ノ山 賢一 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (40580759)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動学マクロ / 累進課税 / 最適金融政策 / 不決定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、労働所得に対する累進課税を導入した動学マクロモデルの先行研究調査、応用モデルの構築、ならびに経済ショックの波及効果と課税累進度の関係性の分析を進めた。 本年度の分析の1つとして、Calvo型の価格硬直性を導入した動学マクロモデルの先行研究を参考に2国開放経済における経済ショックの国際的波及効果と累進課税の関係について分析を行った。主に、コストプッシュショックが生じた際の波及効果に対して、各国の課税累進度が及ぼす影響について考察した。 分析の結果、自国と外国の双方で同様のショックが発生した場合、各国の課税累進度が高くなるほどインフレによる厚生損失が拡大することが明らかとなった。また、外国における経済ショックに対して、自国の課税累進度が高いほど厚生損失が縮小する一方、外国の課税累進度が高いほど厚生損失が拡大することが示された。これらの結果は、外国からの経済ショックによる厚生損失を回避するために自国の課税累進度を高めると、経済ショックが全世界的なものであった場合には、世界全体の厚生損失が拡大することを示唆している。上記の結果はMATLABを用いた数値シミュレーションにより、当初の各国の課税累進度の値に依存せず生じることを確認した。 以上の分析は論文“Progressive taxation and optimal monetary policy in a two-country New Keynesian model”としてとりまとめ、学術誌へ投稿中である。 本年度の分析は、他のニューケインジアンモデルにおける累進課税と最適金融政策の関係や経済ショックの波及効果の分析に展開できると考えている。本研究の主題である、消費税の所得累進制を導入した動学モデル分析へ応用するための基礎が出来たと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は当初の計画にしたがって、所得累進課税を導入した理論モデルの文献調査、応用モデルの構築、最適金融政策下における経済ショックと課税累進度の関係について分析を行った。 モデル分析のひとつとして、労働所得課税が経済ショックの国際的波及効果にもたらす影響について論文に取りまとめた。 引き続き、消費税に所得累進課税を導入した理論モデルの構築と分析を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は、本年度の結果をもとに消費税に所得累進制を導入した動学マクロモデルの構築と分析を進める。主に、消費税率が所得に連動して変化するように設定し、均衡経路の安定性条件と最適金融政策の関係や経済ショックの波及効果に対して課税累進度がもたらす影響について考察する。 また、消費税累進制への応用を前提に、累進課税を導入した他のニューケインジアンモデルの構築と分析も並行して進める。現在のところ、借入制約が存在する場合の労働所得累進課税のモデルや金融資産所得に対する累進課税制を導入したモデルの分析を計画している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により当初計画していた研究費使用分の一部が変更となった。学会参加のための旅費や論文へのコメントを得るための交通費などが使用できなかった。 未使用分の予算は、次年度以降、論文校正費や文献購入費、学会参加のための費用に使用することを計画している。
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