2022 Fiscal Year Research-status Report
自然災害が経済的選好に与えた影響:インドネシアの家計パネルデータを用いた分析
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21K01476
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
東方 孝之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東南アジアI研究グループ, 研究グループ長代理 (70450533)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自然災害 / リスク選好 / 時間選好 / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自然災害の多い国として知られているインドネシアを事例に、自然災害がリスク選好や時間選好といった個人の経済的選好に与えた影響を探ることにある。この目的を達成するため、本研究では最初に、インドネシア政府が定期的に収集している家計調査(Susenas)や村レベルのセンサスデータ(Podes)といった個票データと、米国のRAND研究所が収集・公開している家計パネルデータ(IFLS)とを組み合わせたデータセットの構築を行う必要がある。2022年度は前年度にひきつづき、このデータセット構築作業に取り組んだ。Podesは基本的に3年に一回の頻度で、約8万にのぼる最末端の行政単位である村・区レベルのさまざまな情報を収集しており、自然災害情報も入手することができる。研究目的の遂行のためには、この自然災害情報を経済的選好データが含まれるIFLSデータとマッチングする必要性があるが、後者は村のひとつ上の行政単位である郡レベルでしか位置情報が明らかとされていない。IFLSデータにはサンプルとなっている家計が属する約300のコミュニティについての詳細な調査結果も含まれているため、このコミュニティの属性を用いてPodesデータとのマッチング作業を進めた。次いで、きわめてシンプルな分析枠組みのもとで、暫定的な推計作業にも着手した。IFLSに含まれる情報をもとに先行研究にならって危険回避度を計算し、2007年から2014年にかけての危険回避度の変化をみたところ、自然災害が観察された村・区の居住者は危険回避度が高くなる傾向がみられた。今後はこの暫定的な分析結果の頑健性などを確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
村落センサスデータのパネル化および家計パネルデータとのマッチング作業に当初の予想以上に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、まず、前年度に試みた暫定的な推計結果について頑健性を確認し、分析結果をセミナーなどで報告するとともに、Discussion paperとしてまとめる。次いで、リスク選好の変化が人的資本への投資に与えた影響についての推計作業に着手する。この研究成果については2024年度までにDiscussion Paperとしてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響から現地調査を見合わせたことに加えて、購入予定であった家計調査の個票データが年度内に公開されずに手続きに入れなかったことから、次年度へ繰り越すことになった。
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