2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on effective organisational design and coordination mechanisms in public utilities
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21K01483
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 絵理 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00611071)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 公益事業 / 鉄道事業 / 組織間調整 / 費用効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者のこれまでの研究で、公益事業におけるインフラ維持部門と運営部門の間の最適な組織間調整システムについての研究を行った。しかし、これらの研究では、ソフト面である組織間調整システムの制度や運用方法が主な研究対象であり、ハード面である組織構造は「与件」であると仮定していた。これは、公益事業分野では多くの場合、政府の政策や規制によって組織構造が制限されるため、企業側の裁量性がほとんどないと考えてきたためである。このため、ソフト面とハード面の調和および両者を含めた組織全体の最適化については部分的に議論したのみであった。 本研究課題では、ソフト面としての組織の調整メカニズムと、ハード面としての組織構造をともに変数として扱うことで、それらのどのような組み合わせが効率性や生産性を最も上げるのかという全体最適を考えることが主な目的であった。本年度は、公益事業の組織最適化について、日本の鉄道事業を例として取り上げることでその費用効率性の決定要因を分析した。特に組織ガバナンスに焦点を当て、組織デザイン、戦略、コーポレートガバナンスの3つの要因が鉄道事業の生産費用に与える影響をトランスログ費用関数で実証的に分析した。その結果、経営陣のオーナーシップと多角化は費用を削減する効果があるが、大株主による株式所有とホールディングス制の採用、組織のスタッフ機能の拡大は費用を増加させることがわかった。その一方、多くの研究で重要な要因だとされている政府による株式所有は有意な影響を与えないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はデータ収集の際に必要なモデル構築と予備分析を行い、予備的な推定結果を得た。次年度以降はこの結果をもとにさらに推定の精度と頑健性を上げ、議論や解釈を深めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、ソフト面としての組織の調整メカニズムと、ハード面としての組織構造をともに変数として扱うことで、それらのどのような組み合わせが効率性や生産性を最も上げるのかという全体最適を複数の側面から予備分析によって明らかにした。今後は、さらに対象とする産業や組織構造を拡大し、これまで得られている結果の一般化や頑健性の改善、モデルの再構築と発展などを行う予定である。
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Causes of Carryover |
データの確認が必要になったためデータ入力に遅れが生じている。データ確認は各自治体に問い合わせることで行っているが、次年度の前半には終了する予定である。
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