2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on effective organisational design and coordination mechanisms in public utilities
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21K01483
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 絵理 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00611071)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 垂直分離 / 垂直統合 / 持株会社 / 組織間調整 / 組織のコントロール / 鉄道事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、鉄道事業の垂直分離、垂直統合、持株会社という三つの組織構造におけるタスク特性とコントロール・調整メカニズムの組み合わせの可能性を検討し、鉄道分野における将来の中間組織形態に示唆を得た。イギリス、スイス、ドイツ、日本におけるインタビュー調査を通じて、いくつかの実現可能なモデルを見出した。まず、イギリスのケースで示された完全垂直分離のワークフローは、ドイツの持株会社構造よりも、日本やスイスのケースで示された垂直統合のワークフローに近くなる傾向がある。第二に、相互フローやチームワークフローは不確実性が高く、シーケンシャルワークフローは不確実性が低いという関係がある。第三に、垂直分離構造において政府または規制当局が果たしている役割を、垂直統合の組織では内部の意思決定ユニットが代替している可能性がある。第四に、垂直統合の下では、各部門のメンバーが部門単位での最適化行動よりも企業全体としての全体最適を目指すため、部門横断的な横方向のコントロールメカニズムは必ずしも重要ではない。第五に、部門間コンフリクトの解決方法として、日本のようにタスクの相互依存性の高い組織では、交渉が最も頻繁に使用される。逆に、イギリスでは問題の先送りによるコンフリクト回避が行われやすいが、これは垂直分離構造のため調整に関係する主体が多いためと考えられる。第六に、鉄道システム全体に責任を持つ一員としてのグループアイデンティティが、関係者間の統合に効果的に働くことがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、鉄道事業に注目して垂直統合・垂直分離・持株会社という三つの組織構造の比較研究を行った論文が海外の査読付き学術雑誌に掲載された。これに加え、現在は水道事業の委託構造に関する研究を進めており、分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、水道事業の委託構造に関する研究において分析を精緻化していく。現在はデータの確認と精査を行っている途中であり、データの整理は来年度前半に終了し、分析をもとに論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究会が延期になったため。
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