2022 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical Studies of Intergenerational Conflicts on Mitigation and Adaptation Facing Climate Change
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21K01489
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
山上 浩明 成蹊大学, 経済学部, 教授 (70632793)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 気候変動 / 緩和 / 適応 / 財政 / 課税 / 補助 / 国債 |
Outline of Annual Research Achievements |
Fodha氏(パリ経済学校, パリ第1大学 教授)と共同執筆した『Mitigation , Adaptation, and Public Finance』が完成した(以下、FY2023とする)。FY 2023は、気候変動対策の2つの代表的施策である緩和(Mitigation)と適応(Adaptation)の組み合わせを検討したものである。特に、世代重複モデルにおいて、民間から供給される緩和と公的に供給される緩和を想定し、一括税と炭素税(消費税・産出税)によって、緩和への補助と適応支出を賄う財政政策の効果について考察した。その結果、緩和と適応は資本蓄積のレベルが十分に低いときには補完的、十分に高いときには代替的となることがわかった。また、最適な政策の組み合わせは、モデル内で想定された税金・補助金の組み合わせによって達成されることを確認した。さらにFY2023では、上記のモデルの拡張版も考慮し、異なる財政政策についても検討し、財政政策の設計によって緩和と適応の代替性(補完性)が影響を受けることを明らかにした。さらに国債を導入したモデルによって、国債発行と資本蓄積の関係を明らかにした。 さらに、本研究課題に関して、鈴木史馬氏(成蹊大学教授, SOAS客員研究員)と『Green bonds and term premiums』を執筆した(以下、SY2023とする)。SY2023は、気候変動のもつ不確実性に注目し、代表的個人モデルにおいて気候災害が経済活動によって内生的に発生するモデルを構築した。また、その災害発生がマルコフ確率過程に従うものとした。SY2023は、このモデルにおいて満期の異なる国債を政府が発行すると裁定機会が発生することを明らかにした。また、最適政策は均衡財政を満たすが、均衡財政を満たせない場合は国債が社会厚生を改善することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった論文FY2023が完成を迎え、国際会議などでの報告を経て、現在は査読誌に投稿しているところである。また、本課題に関連する新規の論文SY2023も完成し、国際会議などで報告予定であるとともに、現在査読誌に投稿中でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
SY2023において、気候変動の不確実性を考慮したモデルにおいて、国債が裁定機会を生み出すことを明らかにした。この効果は、異質な個人に対する国債の再分配機能を示唆している。そこで、SY2023の代表的個人モデルを異質個人モデルに拡張することで、国債の再分配効果を明らかにするモデルを検討している。 また、FY2023ではすでにさまざまな財政政策の設計の検討を行ったが、さらなる拡張についても検討を続ける予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、コロナ感染状況などのため予定していた出張などを実施できなかった。そのため、次年度使用額が生じた。2023年度においては、国際会議や海外研究者との打ち合わせを予定している。この次年度使用額などは、これらの出張費として支出する予定である。
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