2021 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク産業における企業の経営戦略の選択と規制競争政策
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21K01491
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中村 靖彦 日本大学, 経済学部, 教授 (90453977)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 寡占市場 / 価格競争 / 数量競争 / 経営委任 / ネットワーク外部性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ネットワーク外部性に関連する研究として次のような研究を行った:先行研究においては,Corporate Social Responsibility(CSR)に従事する企業の戦略の内生化の問題において,所有と経営の分離の観点が考慮されていなかったが,この度の我々の研究では所有と経営の分離を明示的に考慮した上で結果の頑健性について考察した。特に,CSRに従事する企業の目的が消費者余剰と自社の利潤の線形結合であらわされる場合には,純粋な価格競争(両社ともに戦略として価格を選択)か,または数量競争(両者ともに数量を選択)のみが均衡において観察されることが示された。この結果は先行研究とは異なる結果であり,論文として国際査読付き雑誌の掲載を勝ち取った。この研究の結果については,CSRに従事する企業が社会厚生と自社の利潤の凸結合を目的に持つ場合に関しても,同様の考察を終了した。この研究についても早期の国際査読付き雑誌の掲載を勝ち取るべく努力したい。また,上記と同じ文脈において,所有と経営の分離の応用的な要素として,企業所有者が市場規模に関して正しい期待を持ちえない経営者を雇う可能性について考察した。この研究については,上記の研究と同様に純粋な価格競争と数量競争が均衡において観察されることが共通の結果として得られるが,均衡の分布に関しては,財の同質性の程度の変化に強く影響を受けることが得られた。さらに,上記の研究のいずれでも,均衡で生じる競争が社会的に最適(社会厚生が最大)になりえるかという観点からも考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文の執筆自体が遅延しているわけではないが,現状で国際査読付き雑誌の掲載を勝ち取った研究は,いずれも本研究計画の重要な要素である「ネットワーク外部性」に関する研究の準備段階といえるものである。したがって,翌年度以降の研究の進展へと速やかに引き継がねばならないという意味において,研究計画自体は「少し遅延した」状態であると判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」の箇所でも述べたように,現段階での研究は「ネットワーク外部性」を導入する前の準備段階のものであり,国際査読付き雑誌の掲載を勝ち取った論文の考察に対して,財同士の「ネットワーク外部性」の要素を導入した場合に結果がどのように変化するかを考察することが次に要請された方策である。次年度以降,漸次この方面の研究に取り掛かりたい。
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Research Products
(2 results)