2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Institutional Reforms and Performance in the Railway Industry
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21K01501
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水谷 文俊 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (60263365)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 鉄道事業 / 投資行動 / ガバナンス / 組織構造 / 上下分離 / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、鉄道事業における制度改革とパフォーマンスに関して、理論的・実証的に分析することである。具体的に分析する側面は、(i)投資行動、(ii)イノベーション、需要と価格、(iii)望ましい上下分離タイプ、の3つである。すなわち、第一は、鉄道事業においてこれまで実施されてきた制度改革がその産業自体の投資行動にどのような影響を与えたのか、第二は、鉄道事業における制度改革や環境変化がイノベーションや鉄道需要・価格に与えた影響、さらには価格設定に影響する要因分析、第三は、組織構造として、望ましい上下分離形態はどのようなものかを、検討するものである。 本年度は、鉄道事業における上下組織構造タイプとパフォーマンスの関係の分析と投資行動モデルの初期分析を主に行った。パフォーマンス指標としては、サービス水準(ロードファクターなどの需要や事故率など)や投資額などを、そして、上下構造の種類としては、(i)完全分離型、(ii)持株会社型、(iii)キーパワー分離型(iv)完全一体型、の4つである。費用に関しては、列車密度が小さい場合には上下分離型が、一方、列車密度が大きい場合には上下一体型の方が望ましいということがわかっているが、需要に関しては上下分離はプラスの効果を示している傾向がみられることがわかった。しかしながら、投資行動に関しては、上下構造の違いとの明確な関係が読み取れなかった。また、投資行動モデルに関しての初期分析では、規制に関しては明確な投資の決定要因とはなっていないように思われる。それよりもGDPなどの経済状況や鉄道事業の競争状況の影響が大きいことがわかった。このような結果を論文としてまとめ、学会発表を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症が拡大し、感染防止の観点から、当初予定した国外での学会発表を行うことができなかった。しかし、Webによって国際会議に参加し、投資行動モデルの初期分析結果を発表することで、いくつかの改善すべき点を明確にすることができた。また、費用のパフォーマンスに関してもモデルの改善を行うことができた。以上のことから、当初の計画と同じ進捗で本年度を終えることができたため、上記の評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、投資モデルに関しては、今年度の学会発表でわかった改善点を修正し、投資行動のモデル構築を行う。そしてその成果を夏に行われる国際学会で発表して、最終論文として国際学術誌に投稿する予定である。また、イノベーションや価格に関しては、国際的なデータを共通指標として入手することは困難であることがわかったので、日本の鉄道企業データを中心に分析を行う予定である。特に、次年度の価格分析に関しては、これまでの文献整理を行った結果をもとに分析モデルの整理と追加データの整理を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度8月末に、ハンガリーで開催されたヨーロッパ地域学会に参加して、投資行動モデルに関する初期分析結果について意見交換を行う予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の再拡大があったことや、ウクライナ戦争の影響のため、対面参加を断念し、Webでの参加となった。そのため、次年度カナダのモントリオールで開催されるWorld Conference on Transport Researchの学会に参加し、対面での発表をするために予算を次年度に繰り越した。
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