2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01506
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
友原 章典 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (80448810)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 外国人労働者 / 移民 / 犯罪率 |
Outline of Annual Research Achievements |
移民受け入れによる影響は複雑であるため、どのような場合に市民に恩恵があるかを経済学的に分類して整理することがこの研究プロジェクトの目的である。その際、地域の差異が重要な要素となる。これまでの研究を見てみると、移民の受け入れ国における影響、つまり、国全体でみた平均的な影響が研究されてきた。しかし、実際に移民の受け入れにおいて受け皿となる地方政府の観点から研究する必要性が提唱され始めている。地域によって移民を受け入れている程度がかなり違うことを考えると、こうした実務面からの要望は当然であろう。 2023年度は在留外国人の存在が犯罪に影響を与えているかというトピックを中心に分析を行った。この研究の背後には、外国人の増加がもたらす住環境の変化によって、犯罪が誘発されているのではないかという懸念がある。たとえば、生活習慣の違う外国人が多い地域では、ごみが散乱したり、騒音が激しかったりすることから近隣住民とのトラブルに発展した例がいくつかある。また、学術的にも、地域における民族の多様性が進むと、住民間の信頼が損なわれ、地域のつながりが弱くなるという研究がある。 そこで、東京都のデータを使用し、市区町村における犯罪数と在留外国人数の間には何らかの関係がみられるかを分析している。これまでの研究を概観すると、移民が犯罪に与える影響に関しては、あまり影響がないとする研究がある一方で、犯罪が増加するという研究もあり、見解の一致を見ているとは言えない。市区町村のような細かな地理的分類といった具合に、これまでの研究で考慮されていない要素に焦点を当てて、それに適した計量経済モデルを使用して分析することで、見解の不一致をもたらす原因について分析を進めているところである。地域の特性を踏まえることで、既存研究の成果を整合的に説明できる可能性があることが学術的な意義である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RAの採用対象である大学院生から適切なRAの確保が出来なかったためにデータの入力・整理が予定通りに進まなかったことに加え、分析結果の妥当性についていくつかの異なるモデルを使った検証に想定以上に時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は前年度に引き続き在留外国人の存在が犯罪に影響を与えているかというトピックを中心に分析を行う予定だ。東京都のデータを使用し、市区町村における犯罪数と在留外国人数の間には何らかの関係がみられるかについて、前年度から行われた分析を精緻化して海外ジャーナルでの出版を目指す。これまでの研究を概観すると、移民が犯罪に与える影響に関しては、あまり影響がないとする研究がある一方で、犯罪が増加するという研究もあり、見解の一致をみているとは言えない。市区町村のような細かな地理的分類といった具合に、これまでの研究で考慮されていない要素に焦点を当てて、閾値を使ったモデルを使用することで、見解の不一致をもたらす原因についてその手掛かりが得られると考えている。
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Causes of Carryover |
データの入力・整理が予定通りに進まなかったことや分析結果の妥当性についていくつかの異なるモデルを使った検証に想定以上に時間がかかったことで、研究が予定通りに進まなかったため。2024年度はデータの入力・整理作業を専門業者に依頼する費用、論文の英文校正とジャーナルへの査読・投稿料、プレゼンテーション用の資料作成、資料(含む書籍やデータ)の購入などを中心に支出を行う予定である。
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