2023 Fiscal Year Research-status Report
Real Estate Market Cycles and Optimal Timing for Investment
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21K01510
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山村 能郎 明治大学, グローバル・ビジネス研究科, 専任教授 (60284353)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ビジネスサイクル / 最適投資時点 / 不動産開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き構築した複占競争モデルを発展させ、情報非対称性が開発タイミングどのような影響を与えるかについて分析を行っている。不動産開発における複占モデルに関する既存研究のモデルを参考に、不動産開発収益のみならず開発費用についての不確実性を考慮している。そこでは、開発先導者となるリーダー企業と遅れて開発市場に参入するフォロワー企業を想定し、開発した不動産の需要と開発投資費用に情報の非対称性存在し、同時に競争力格差がある場合について、それらの差異が複占モデルにおける先導者の投資時点にどのような影響を与えるかについて考察するためにベースとなる理論モデルを構築している。また、将来収益・ 将来費用の動的構造について将来の不確実性を前提として、リーダー・フォロワーの開発行動について論じている。 理論モデルにおいては、リーダーが開発投資を行った後にフォロワーの行動について考察するバックワードによる解法で、はじめにフォロワーの最適投資時点を考察する。さらに、フォロワーの最適行動から、リーダーの開発投資の最適時点求める。そこでは、不確実な将来収益・費用の相対価格が、十分に大きい場合はリーダーは先制的な開発投資を行い、独占的利益を得るが、相対価格が小さいと場合は、いずれのデベロッパーも先制行動はとらない。すなわち、賃貸料と開発投資コストで表現される相対的賃貸料が十分大きくなり、早期投資による不利益を埋め合わせるのに十分なプレミアムである独占的利益が補償される場合、リーダーは先制的な行動をとる。一方で、不動産賃貸料、開発費用の相関が高い場合は開発を早める効果があることを示している。当該年度は、シミュレーションによってこれらの閾値について考察をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度はこれまで構築した複占競争による不動産開発投資モデルに関する基礎モデルを利用して不動産収益と開発費用の不確実性を考慮したシミュレーションを実施しており、その点に関しては予定通りの研究を進めている。そこでは、情報格差や収益・費用の不確実性がリーダー・フォロワーの不動産開発行動に与える影響と行動転換の条件について考察を進めている。ただし、研究代表者の研究活動以外の本務校業務が過多であったため、シミュレーションパラメータに関する不動産デベロッパーや不動産関連団体へのヒヤリング調査などに遅れが生じており、その点についてやや研究活動の進行に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果である不動産開発に関するリアルオプションモデルの基礎モデルを利用して不動産市場における将来収益および情報格差、競争力格差についてのシミュレーション分析を精緻化する。特に、国土交通省で公表されている不動産インデックス(住宅、商業)などの情報や研究代表者が別途、分析・作成している商業用不動産インデックスなどの不動産市場データを活用して状態空間モデルによるトレンド、季節性、自己回帰などの成分を抽出を行い、ビジネスサイクルに関する実証分析を行う。同時にその成果を活用して基礎モデルのパラメータの妥当性の検証を行う。 一連の成果を通して、不動産開発投資モデルにおいて、開発時点に関するシミュレーションモデルの精緻化を図るとともに、開発のブームが生成される条件について検討を行う。また、大規模な経済的ショックとビジネスサイクルとの関連性についてもシミュレーション結果に基づく考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
これまで理論モデルとシミュレーションを中心とした研究が中心であったため、計算機器等は既存のものを利用している。2020年のコロナ流行期以降は、国際学会、国内学会ともにオンラインで参加することが可能であった。加えて、その他調査研究旅費等についても同様の理由で未使用のものを含めて研究費の多くを次年度に繰り越している。
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