2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K01517
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
田中 清泰 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター 経済統合研究グループ, 研究員 (30581368)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 特恵関税 / カンボジア / 欧州連合 / 経済制裁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、カンボジア経済に大きな影響を与える欧州連合(EU)の特恵関税制度について分析を進めた。カンボジアでは政治活動の抑圧や人権侵害が深刻化しており、EUはこうした問題の改善を求めて、カンボジアに対する特恵関税制度であるEverything But Arms(EBA)協定について、2019年2月に停止措置の準備に入ったと公表した。欧州委員会はカンボジア政府に人権問題の対応を求めたが、カンボジア政府の対応はEUの懸念を十分に払しょくできず、カンボジアの政治状況は特恵関税制度に定められている人権項目に違反していると判断された。 2020年2月にEUは、カンボジアに対する無税無枠の措置を、一部の品目について一時的に停止した。一部停止の措置は2020年8月12日に実施された。具体的には、一部の縫製品(高付加価値の縫製品は引き続き無関税)、一部の靴製品(特定の靴は引き続き無関税)、旅行用製品、砂糖の4品目に対する特恵関税が停止された。これらの品目を合計すると、EU市場向けのカンボジア輸出のうち2割弱にあたる10億ユーロ(約1200億円)分が影響を受けることになる。 EUの特恵関税停止がEUにおけるカンボジアからの輸入に与えた影響を推定した。EUの特恵関税停止は一部の品目に限定しており、その他の品目について無税無枠の措置が継続された。こうした違いに着目して差の差分析を行った。推定の結果、特恵関税停止によって、停止措置の直前に輸入の駆け込み効果が発生していた。停止後の2020年8月以降は、停止対象となった輸入が大幅に減少している点を確認した。また、こうした影響はニット衣類や布帛衣類、履物類で異なる点を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンボジアに対するEUの特恵関税制度の一部停止について、短期的な効果であるが実証分析を行い、ディスカッションペーパーとして公表できた。こうした点で、研究活動は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
公表したディスカッションペーパーを学会などで報告して、研究成果の普及とともに、論文の改善を行っていく。修正作業が終わり次第、国際的な英文ジャーナルに投稿していく。また、特恵関税制度の停止措置が国内経済に与えた影響について、十分な経済分析が行われておらず、カンボジアのミクロデータを活用して検証する。
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Causes of Carryover |
感染症拡大の影響により国際学会や国内学会の開催が困難となり、当初予定していた出張経費を支出することが出来なかった。次年度の出張経費として使用する予定である。
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