2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K01517
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
田中 清泰 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター 経済統合研究グループ, 研究員 (30581368)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 特恵関税 / カンボジア / 欧州連合 / 雇用 / インフォーマルセクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、欧州連合(EU)の特恵関税制度における原産地規則の簡素化がカンボジアの雇用に与える影響を検証した。特恵関税制度の受益国における輸出企業が特恵関税制度を活用するためには、輸出品が原産地規則を満たす必要がある。原産地規則が緩和されると、輸出企業は輸入中間財を柔軟に利用できるため、特恵関税を活用した輸出を拡大できる。本研究は、EUが2011年に実施した原産地規則の緩和がカンボジア縫製品の輸出を拡大したことを明らかにした。一方、雇用に対する影響は、十分に分析されていない。 本研究は、原産地規則の簡素化で外生的に起こった輸出拡大は、カンボジア縫製産業におけるフォーマルとインフォーマル企業の雇用にどのような影響を与えたのか、分析した。一般的に、インフォーマル企業は政府登録をしていないため、統計で捕捉することが難しい。一方、カンボジアで実施された次の事業所統計は、全国を対象としてすべての事業所を対面で調査している。(1)Establishment Listing in 2009、(2)Economic Census in 2011、(3)Inter-censal Economic Survey in 2014。このミクロデータを活用して、外生的な輸出拡大がフォーマルとインフォーマル企業の雇用に与える影響を分析した。 実証の結果、フォーマルな縫製企業の雇用は大きく拡大した一方で、インフォーマル企業の雇用は影響を受けていないことが明らかになった。例えば、輸出の処置効果は、フォーマルな縫製企業の雇用を2014年に平均137人増やした点を示唆する。これらの企業は2011年に平均645人の労働者を雇用しているため、処置効果は2011年から2014年の間で21%の雇用増加と言える。さらに、雇用増加の効果は、既存のフォーマル企業や女性労働者により大きいことが明らかになった。
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