2021 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of policies to encourage senior employment
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21K01520
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
坂本 和靖 群馬大学, 情報学部, 准教授 (40470108)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高齢者就労 / パネル調査 / 政策評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の高齢者就労制度の現状を精査し、高齢者の就労活動に対する就労促進制度の影響を分析することにある。中でも、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法(努力義務として「70歳までの就業機会の確保」)の就業促進効果について検証するべく、準備を進めている。 本研究課題の第1年度の実績は以下の通りである。第一に、実証分析に利用するデータ、慶応義塾大学経済研究所パネルデータ設計・解析センター『日本家計パネル調査(JHPS)』、『慶応義塾家計パネル調査(KHPS)』(2004~2021年分)の使用許諾を受け、データの編集作業を行い、分析の準備のため、変数作成を行った。具体的には、55歳以上の就労者の就業状況、就業形態、生活時間、仕事満足度、定年退職以降の就業意欲等の変数の作成及び、記述統計量の計算を行った。 第二に、今年度においては、まだ2021年4月以降における高齢者の就労に関する情報を捕捉できないため、分析の予行として、JHPS/KHPS調査データ(2004-2021年分)を用いて、過去の高年齢者雇用促進施策の改正及び年金制度改正が高齢者就労の関連項目に与える影響を測定した(「現在までの進捗状況」で詳述)。 第三に、2021年4月の高年齢者雇用安定法改正前後に発表された記事やレポートの収集及び整理を行った。具体的には、厚生労働省など官公庁による法改正の解説、65歳以降の就業希望者に対する企業側が導入を検討する対策案、及び研究所機関等における予想される政策の影響の情報の整理を行った。多くの情報は、本研究計画の策定段階において、収集されたものと大きな違いなかったものの、2020年度内におけるCovid-19による労働需要への影響が大きく、期待されたほどの(高齢就労者の就業促進)効果が得られないのではという論調が強かったことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で記したように、調査データ(慶応義塾大学経済研究所パネルデータ設計・解析センターJHPS/KHPS)を用いて、データの編集作業、変数作成、記述統計量の計算など分析の準備作業を行った。 加えて、2021年4月改正以降の調査データがまだ収集されていないため、分析の予行として、過去の高年齢者雇用促進施策の改正(雇用義務化年齢の引き上げ)及び年金制度改正(年金支給開始年齢引き上げ)が高齢者就労に与える影響を測定した。 分析方法は①回帰分析によるDifferences in Differences(DID)推計(山田 2017, Kondo and Shigeoka 2017)、② Propensity Score Matching(PSM)によるDID推計(山本 2008)を行い、制度変更に伴う、高齢者の就業率、労働時間に加え、主観的厚生への影響を推定した。 分析の結果、回帰分析・PSM法による両DID推計で、雇用義務化年齢の引き上げ、年金定額給付部分の支給開始引き上げは就業率を向上させる影響が確認されたが、労働時間、主観的厚生(幸福感)などの項目については一致した結果が得られなかった(分析上の問題については、「今後の研究の推進方策」で詳述)。先行研究に倣った分析手法での実行可能性を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度である2022年度に、高年齢者雇用安定法の改正(2021年4月)以降に実施された情報を含まれた調査年分の『日本家計パネル調査』、『慶応義塾家計パネル調査』が公開される。 既に「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」に記した通り、2021年4月改正の政策効果を推定するために、調査データの編集、変数作成、先行研究で実施された複数の分析手法(回帰分析・PSM法によるDID推計)を用いて、過去の高齢者雇用安定法・年金制度の改正が就労行動に与える影響を推定した。第2年度(2022年度)以降では、2021年改正4月以降の状況が捕捉できるJHPS/KHPS調査データ(2022年度分、2022年1-3月調査実施)を用いて、改正以降における高齢者の就業状況(継続就業、離転職)、労働時間、仕事内容、仕事満足度などの主観的厚生の変化を精査する。 本年度(第1年度 2021年度)、JHPS/KHPSを用いて、過去の改正時における影響を考察した。分析の際に、性別や出生コホート別に区分をすることで、分析対象者数が少なくなるグループが散見された。この問題に対する対処方法として、調査対象者数が多い、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(Japanese Panel Survey of Employment Dynamics : JPSED)」などの他の調査での分析可能性を探りたい。 また、先行研究における、政策に影響されるOutcome(就業率、労働時間、主観的厚生)以外にも、健康状態や所得・資産に対する影響など他に分析対象としうる項目があるため、それらを加え、より広範囲に政策による高齢就労者に対する影響を考察したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(48,085円)は、研究者本人が使用金額の管理を怠ったために発生した。次年度以降はこのようなことが起こらないように、十分に注意したい。
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